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9999-5個別論点・インターネット上の書き込みと名誉毀損

一 最高裁判所平成22年03月15日第一小法廷決定

個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって,おしなべて,閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって,相当の理由の存否を判断するに際し,これを一律に,個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。

 そして,インターネット上に載せた情報は,不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり,これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ること,一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく,インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると,インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない(最高裁昭和41年(あ)第2472号同44年6月25日大法廷判決・刑集23巻7号975頁参照)。

 これを本件についてみると,原判決の認定によれば,被告人は,商業登記簿謄本,市販の雑誌記事,インターネット上の書き込み,加盟店の店長であった者から受信したメール等の資料に基づいて,摘示した事実を真実であると誤信して本件表現行為を行ったものであるが,このような資料の中には一方的立場から作成されたにすぎないものもあること,フランチャイズシステムについて記載された資料に対する被告人の理解が不正確であったこと,被告人が乙株式会社の関係者に事実関係を確認することも一切なかったことなどの事情が認められるというのである。

 以上の事実関係の下においては,被告人が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があるとはいえないから,これと同旨の原判断は正当である。

二 町村北海道大学教授のコメント
 一言でいえば、他のメディアと同等に確実な資料、根拠に照らして相当な理由がなければダメだということだが、
 具体的にどうすればよかったのかというと、この決定文で特に指摘されているのが反対当事者である乙会社関係者に事実関係を確認することである。
 全体を通じて、一方の言い分だけを鵜呑みにして、他方の言い分を全く聞かずに、社会的評価を低下させるような批判をすることは、それが真実だと証明できないときに法的責任を生じさせるということが示されている。

 このこと自体は当然のことだ。

 もっとも、名誉毀損罪で刑事立件することの萎縮効果を考えると、この件を起訴して有罪判決で終わらせることの弊害は大きいように思う。このケースでは民事紛争として解決することが望ましい。
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2010/03/arret-c8a2.html#more

投稿者 goemon : 2010年3月22日 21:39

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