« 9999-22違法情報と管轄警察・全国協働捜査方式など | メイン | 9999-24個別論点・ネット交番 »

9999-23個別論点・マジコン販売に刑罰規制へ

一 世界で推計被害4兆円 「マジコン」販売に刑事罰 文化庁、来年にも著作権法改正案


 海賊版のゲームソフトをインターネットでダウンロードして遊べるようにする機器(回避機器)について、文化庁は製造・販売やサービスの提供などを規制するため、刑事罰の導入を盛り込んだ著作権法の改正案を今年度中にまとめる方針を固めた。早ければ来年の通常国会に提出する見通し。アジアや欧米各国では、携帯ゲーム機向けの「マジコン」と呼ばれる機器が多数出回り、国内でも被害が深刻化しており、歯止めをかけるのが狙いだ。

 マジコンをめぐっては、不正競争防止法で機器の頒布などに対する損害賠償請求権が認められており、東京地裁では昨年、販売などの禁止を命じる判決も出されたが、同法に罰則規定がないため現行の民事措置だけでは抑止効果が低く、氾濫(はんらん)させる一因になっているとの指摘もある。

 一方、日本が強みを持つコンテンツ産業の成長を阻害する懸念も広がっており、文化庁は知的財産権の侵害だけでなく、産業振興の観点からも刑事罰の早期導入を図りたい考えだ。

 ゲーム機本体には、違法にダウンロードした海賊版ソフトを正常に起動させないアクセスコントロール機能がついているが、マジコンを使えば、誰でも簡単に制御機能を無効にすることができる。

 海賊版ソフトは、ファイル共有ソフトなどを通じて多数流通。マジコンを使った被害額は、全世界で4兆円近くにのぼるという推計データもある。

 日本では著作権法上、ソフトを流通させた者のほか、今年1月の改正法で個人が著作権者の承諾を得ずにダウンロードした場合でも違法となったが、マジコンそのものの売買については同法で摘発できない。

 さらに、マジコンユーザーがゲームのダウンロード目的ではなく、音楽や映像の再生など別の用途での利用を主張するケースや、販売時点では回避機能をつけず、購入後にネットで回避プログラムをダウンロードさせるケースもあるなど、手口が巧妙化している。

 このため文化庁は、主に海外で製造されているマジコンの輸入規制を視野に入れ、関税法を所管する財務省や、不正競争防止法を所管する経済産業省とも連携。罰則については、懲役刑の導入も検討している。

 マジコン 人気携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の海賊版ソフトを使えるようにする回避機器で、語源は「マジックコンピューター」。DSには海賊版ソフトが起動しない技術が組み込まれているが、ソフトのデータをSDカードなどの記憶媒体に取り込み、マジコンに挿入してDS本体つなげば使用可能になる。1個5千円程度で市販されており、ネット販売などで簡単に手に入る。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101011-00000501-san-soci

 

二 東京地裁平成21年2月27日判決・ニンテンドーDS事件


第2 事案の概要 
 本件は,携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」等を製造,販売する原告任天堂並びに同ゲーム機用のゲームソフトを格納したゲーム・カード(DSカード)を製造,販売する原告らが,被告らに対し,① 被告装置(R4 Revolution for DS)の輸入,販売等が
② 不正競争防止法2条1項10号に違反すると主張して, 
③ 同法3条1項及び2項に基づき,
④ 同装置の輸入,販売等の差止め
⑤ 及び在庫品の廃棄を求めた事案
である。 

不正競争防止法2条1項10号
(定義)
第2条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
十  
営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)
 により
 制限されている
 影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を
 当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能
 のみを有する
 装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を
 譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、
 輸出し、若しくは輸入し、
 又は
 当該機能
 のみを有する
 プログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

不正競争防止法3条
(差止請求権)
第3条  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

第3 当裁判所の判断
 
 1 争点1(技術的制限手段)について 

(1) 平成11年改正法の立法趣旨
 
 証拠(甲28,37~41,乙17,18)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 

ア 平成11年改正法
 
 (ア) 不正競争防止法2条1項10号,11号,7項(改正時5項),8項(改正時6項)及び19条1項7号(改正時11条1項7号)は,不正競争防止法の一部を改正する法律(平成11年法律第33号。平成11年4月23日公布。同年10月1日施行。)により新たに設けられた規定である(以下,

 この法律を「平成11年改正法」といい,この改正を「平成11年改正」という。)。 

 (イ) 平成11年改正に先立ち,平成9年10月,産業構造審議会に,知的財産政策部会と情報産業部会の合同会議(以下「合同会議」という。)が設置され,平成11年2月,審議経過をまとめた合同会議報告書(乙18)を発表した。 

 財団法人知的財産研究所は,「デジタルコンテンツの法的保護のあり方に関する調査研究委員会」を設置し,平成11年3月,その調査研究をまとめた「デジタルコンテンツの法的保護のあり方に関する調査研究報告書」を発行した。 

 (ウ) そして,平成11年12月,立法担当者による「改正解説」(甲28,乙17)が発行されている。 
イ 平成11年改正の背景  
 (ア) 情報関連技術の著しい進展とコンテンツ提供事業の発展
 
 情報処理技術,ネットワーク関連技術,情報圧縮技術等の情報関連技術の著しい進展に伴い,特に,DVDの商品化やインターネットに代表されるデジタルネットワークが普及して,家庭内において音楽,影像,ゲーム等を楽しむ情報処理環境が整いつつある状況となり,
 高速度で大容量のデジタル・データを従来より安価に提供することが可能となってきたことから,
 アナログ・デジタルを問わず多様なメディアを通じてコンテンツを提供する事業(以下「コンテンツ提供事業」という。)が急速に発展するようになった。

 なお,「コンテンツ」とは,合同会議報告書において,「従来,音,影像,プログラム等取引の対象となる情報を示す語として,書籍,ビデオ,CDといった情報が体化した商品の名称を用いる場合が多かったが,本合同会議においては,情報が電子化され,オンライン,オフラインを問わず,また磁気テープ,デジタルディスク等の媒体を問わずに流通してきている現状に鑑み,媒体と独立して真に取引の対象となっている情報を示す言葉として『デジタルコンテンツ』という文言を用いてきた。
 しかしながら,『デジタル』という言葉が,かえってデジタル形式の情報のみを特定しているとの誤解があるため,それを避けるため,この報告書においては単に『コンテンツ』と呼称することとする。」と定義されている(「合同会議報告書」乙18の1頁,「改正解説」乙17の190頁)。 

 コンテンツ提供事業においては,音楽,映像等を多数のユーザーに提供できるように加工する者,音楽,映像等を視聴するための機器・ソフトを製造する者等の様々な事業者が連携している(コンテンツ提供事業に関与するこれらの事業者をまとめて,以下,「コンテンツ提供事業者」という。)。 

 (イ) コンテンツの管理技術と無効化  
 コンテンツの提供に当たっては,
① その管理外でコピーが大量に売買・頒布されるようなことがないこと(無断複製の防止),
② その提供するコンテンツの視聴,使用に対する対価徴収が確保されること(対価徴収の確保)が必要不可欠である。 

 デジタルコンテンツは,
① 複製が非常に容易であり,かつ,
② 複製に伴う劣化がほとんどの場合生じないという特性を有していることや,
③ デジタルコンテンツへのアクセスが非常に容易であることから,
 コンテンツ提供事業者は,多額の投資をして,コンテンツの無断複製を防止し,対価徴収を確保するため,コンテンツにコピー管理技術やアクセス管理技術を施すようになった。
 
 これに対し,
 これらの管理技術の特徴に応じた無効化機能を有する機器やプログラム(以下,併せて「無効化機器等」という。)を用いて管理技術を無効化する行為や,これらの無効化機器等を提供する行為が行われるようになった。

 コンテンツ提供事業者が既存の無効化機器等に耐え得る管理技術を開発しても,程なくこの新しい管理技術に対する無効化機器等が発生するという「イタチごっこ」の状況になっていた。
 
 無効化機器等の提供を放置すれば,コンテンツの取引契約の実効性が著しく損なわれ,コンテンツ市場における公正な取引を阻害することになるため,無効化機器等を提供する行為により営業上の利益を侵害される者又は侵害されるおそれのある者に法的な救済を与える必要があった。 

 (ウ) 国際的な動き
 
 同立法当時の国際的な動向は,以下のとおりである。
 
  a WIPO 

 平成8年12月に採択されたWIPO著作権条約(WIPO Copyright Treaty[WCT])11条及びWIPO実演家・レコード条約(WIPO Performances and Phonograms Treaty[WPPT])18条
 は,
 「技術的手段の迂回に関する義務」として,
 各国は,著作権者(実演家又はレコード製作者)が利用する有効な技術的手段であって,その著作物に関して,著作者の許諾若しくは法により認められていない行為を制限するために用いられるものに対して適切な法的保護及び効果的な法的救済措置を講じなければならないと規定している。 

  b 米国 

 平成10年に成立した「デジタルミレニアム著作権法[Digital Millennium Copy right Act of 1998]」
 は,
① 著作権者の権利を保護するための技術的措置(技術的保護手段,技術的制限手段)を迂回する機器の提供行為等を規制すると同時に,
② 著作物へのアクセスを効果的に管理する技術的手段の回避行為等を規制している。 

  c 欧州 

 平成10年11月にEUの閣僚理事会において採択された「条件付アクセスに基づく又は準拠するサービスの保護に関する指令[Conditional Access指令]」
 は,
 課金確保のために施されたアクセス管理技術の迂回機器の提供行為を禁止することを主たる内容としている。 

 (以上,甲28,37~41,乙17,18,弁論の全趣旨) 

   ウ 規制の在り方 

 (ア) 合同会議での検討 

 上記イの背景事情を踏まえ,合同会議は,
① 新たなコンテンツ市場を育成する,②新たなコンテンツ市場の育成,
② コンテンツ提供事業者の利益,利用者の利便性,情報技術の進展等についてバランスのとれた競争秩序を形成する,
③ 特に,取引コストの低減と取引形態の多様性の確保と技術開発への悪影響を最小限とするよう配慮する,
④ コンテンツ流通分野において,コンテンツ流通手法の多様化と低コスト化を実現し,電子商取引を普及させ,我が国における情報化の進展を一層促進させる,
⑤ 制度の国際的な調和に配慮するという視点から,法規制の在り方について検討した。 

 (イ) 合同会議報告書 

 合同会議報告書(乙18)には,法規制の在り方について,次の記載がある。 

 「2.対応に当たっての基本的考え方 

  (1) 無効化機器等販売の問題 

 近時コンテンツに施されるコピー管理技術やアクセス管理技術を無効化する機器やプログラムが販売されるという事態が発生している。
 このような事態を看過すれば,コンテンツ提供の際の取引秩序が損なわれ,事業の存立基盤が失われかねない。 

  (2) 技術開発の『鼬ごっこ』 

 このような事態に対処するため,コンテンツ提供業者等は,コピー管理技術やアクセス管理技術の高度化に努めている。
 しかし,いったん既存の無効化機器等に耐える新しい管理技術が開発されても,程なくこの新しい技術の無効化機器等が発生する,いわゆる『鼬ごっこ』が生じている。
 
 こうした『鼬ごっこ』は,管理技術の対象となり得るコンテンツの需要が大きければ大きいほど激しくなる(無効化機器の頒布時期が早まったり,頒布量が増えたりする)傾向にあり,コンテンツ提供業者がビジネスを安心して展開することを困難にしている。
 
 従って,『鼬ごっこ』については,これを放置することなく抑制するための法的ルールが必要であると考えられる。 

  (3) 技術開発への悪影響 

 しかし一方で,こうした規制が強すぎる場合には,管理技術の開発努力の減退という悪影響が生ずるとの懸念もある。
 例えば,仮にパーソナルコンピュータ等汎用機の販売や管理技術の強度テスト機器の提供が規制されることになれば,コンテンツ提供業の基盤を守るための規制が,逆に,コンテンツを楽しむ家庭内の情報処理機器等の普及や,管理技術の技術進歩を阻害してしまうおそれが強い。 

  (4) 契約の補完としての役割 

 コンテンツの視聴・使用に対する対価徴収の確保や無断コピーの防止は,本来は有体媒体の売買若しくはネットワークからのダウンロード等のコンテンツの取引が行われる際の契約によって規律されるべき問題である。
 しかし,『裸』の状態では容易にコピーやアクセスがなされてしまうコンテンツの取引においては,コピー管理又はアクセス管理のための措置を施すことでようやく契約条項の実施が確保される場合が多い。
 このため管理技術を無効化する機器等が広く供給されることを放置すれば,コンテンツの取引契約の実効性は著しく損なわれることになる。
 こうした事態は,コンテンツ市場における公正な取引を阻害するものと認識できる。 

  (5) 結論 

 以上の論点を踏まえ,コピー管理技術及びアクセス管理技術を巡る法規制の在り方については,次のように対応する必要がある。 

 ○ 将来の成長産業として有望なコンテンツ提供業の発展のために,コピー管理技術及びアクセス管理技術の無効化機器やプログラムの蔓延を抑制するための法的ルールを設ける。 

 ○ このため,こうした管理技術の無効化機能を有する機器等の提供を不正競争防止法上の『不正競争行為』として規定する。 

 ○ 規制の導入に当たっては,コンテンツ取引の契約の実効性を補完するとの目的を踏まえ,管理技術の開発に悪影響を与えず,また,コンテンツ流通の提供形態の多様性を確保するため,必要最小限の規制内容にとどめるよう配慮する。」(4頁) 

 (ウ) 改正解説 

 改正解説(乙17)には,合同会議における審議等,立法段階で留意した点について,次の記載がある。 

 「5 無効化機器等の提供の規制について 
 ... 
  (4) 結論 
 今回の検討の趣旨に立ち返れば,成長の著しいコンテンツ提供事業における不正な取引を防止するための必要最小限の規制を導入するという観点に立って進めており,その意味では,規制の対象となり得る行為(無効化機器等の提供,無効化行為そのもの,無効化サービスの提供)のうち,現在実態が存在する無効化機器等の提供の規制だけにまずはとどめ,規制すべき実態が出てきたところで無効化サービスについて規制を検討すべきとされた。」(202頁) 

 「1 不正競争防止法による対応の在り方 

  (1) 将来の成長産業として有望なデジタルコンテンツ提供業の発展のために,コピー管理技術及びアクセス管理技術の無効化機器やプログラムの蔓延を抑制するための法的ルールを設ける。 

  (2) 情報・コンテンツに対する対価徴収の確保の実現あるいはコンテンツ提供者の管理外でコピーが大量に売買されない状態の実現の問題は,本来は物の売買(有体媒体で提供される場合)若しくは役務の売買(ネットワークからダウンロードする場合)が行われる際の契約によって規律されるべき問題である。 

  (3) しかし,コンテンツ提供業においては,コピー管理又はアクセス管理のための措置を施すことによって,正当に契約を結んでいる個々の情報・コンテンツの利用者における契約条項の実施の確保が図られている場合も多く,管理技術を無効化する機器等が社会に広く存在する状態を許容すれば,情報やコンテンツの取引の際に結ばれることとなる契約の実効性が著しく損なわれる。この点について何らかのコンテンツ提供業を行う者に対して実効的な法的保護が図られることが,現在揺籃期にあるコンテンツ提供業の存立基盤を確固としたものとする上で必要があるため,こうした技術の無効化をその機能とする機器等の提供を不正競争防止法上の『不正競争行為』として規定する。 

  (4) 一方,管理技術を無効化するような機器やプログラムを用いて契約を結ばずに,コンテンツを取得する行為については,民法上の不法行為が成立する場合があると考えられ,したがって民法の特別法たる不正競争防止法で規整する余地は存在する。しかしながら,①情報の円滑な流通に対する十分な配慮,②規制の実効性が乏しいことから,無効化行為によるコンテンツの取得については,不正競争防止法による規制の対象としないことが適当である。 

  (5) 今回導入しようとしている機器等に対する法的ルールの整理は,あくまで情報・コンテンツの取引に係る契約の実効性を補完するために必要最小限度のものとし,契約内容=情報・コンテンツの取引の様態や管理技術の開発に過度の影響を及ぼすものであってはならない。」(213~214頁) 

  (2) 平成11年改正著作権法との比較 

   ア(ア) コンテンツの保護のため,平成11年,著作権法も一部改正されている。 

 平成11年改正著作権法(平成11年法律第77号)は,著作者等の権利を保護し文化の発展に寄与することを目的として(同法1条),著作権等を侵害する行為の防止又は抑止のための技術的保護手段の回避行為について,
① 技術的保護手段の回避を知りながら行う私的複製行為を著作権の私的利用の例外から除外する(著作権法30条1項2号)とともに,
② 技術的保護手段回避罪として技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置,プログラムの複製物の譲渡に刑事罰を導入しているが(同法120条の2第1号,2号),
 差止請求権は認められていない。 

    (イ) 著作権法が規制する「技術的保護手段」は,「電子的方法,磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法...により,...著作者人格権若しくは著作権又は...実演家人格権若しくは...著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止...をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であって,著作物,実演,レコード,放送又は有線放送...の利用...に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物,実演,レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し,又は送信する方式によるものをいう。」(同法2条1項20号)と定義されていて,
 対象となる手段は,著作権等を侵害する行為に対する手段(コピー管理技術)に限定されており,
 著作物等の視聴を制限する手段(アクセス管理技術)は技術的制限手段に含まれていない。 

    (ウ) また,著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものは,技術的制限手段に含まれない。 

   イ(ア) これに対し,
 平成11年改正法(不正競争防止法)は,個々の技術的制限手段を回避する行為やサービスの提供は規制の対象となっておらず,技術的制限手段を回避するための専用機器等を販売等する行為のみを不正競争行為として規制し,
 差止請求,損害賠償請求を認めているが,
 刑事罰の対象にはしていない。
 
    (イ) 平成11年改正法は,
 コンテンツ提供事業者間の公正な競争を確保することを目的としており(同法1条参照),
 同法が対象とする「技術的制限手段」は,著作権等を侵害する行為に限定されておらず,
 無断複製を制限する手段(コピー管理技術)だけでなく,
 無断視聴等を制限する手段(アクセス管理技術)も含んでいる。 

    (ウ) また,「技術的制限手段」は,営業上用いられていることを要するが,著作権者等特定の者の意思に基づいて設けられたものであることを要しない。 

  (3) 平成11年改正当時の技術的制限手段 

 証拠(甲28,37~43,乙17,18)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 

   ア 立法経緯 
 (ア) 合同会議報告書 

 合同会議報告書(乙18)には,平成11年改正法が対象とする管理技術について,以下の記載がある(改正解説(乙17)の215頁以下にも,合同会議等での審議結果として,同じ記載がある。)。 

 「(3)管理技術について 

  (i) 現存するあるいは近未来に登場すると見込まれる管理技術は,技術的な仕様の面から分類すると, 

  (a) コンテンツに信号又は指令を付し,当該信号又は指令に機器を一定のルールで対応させる形態 

  (b) コンテンツ自体を暗号化する形態 
のいずれかに類別されるため,立法に当たっては両者を包含する文言とする必要がある。」(乙18の5頁) 

 (イ) 改正解説 

 改正解説(乙17)には,平成11年改正法が対象とした技術的制限手段について,以下の記載がある。 

 「1 技術的制限手段の整理 

  A. 音楽,映像等の視聴又は記録を制限する手段としては,一定の対価を支払う者に限りその視聴を物理的に可能とする方法(例:映画館での入場料徴収)も考えられるが,現状においては電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他の人の知覚により認識し得ない方法)が用いられるのが通常である。 

  B. 音楽,映像等を提供する事業者が電磁的方法を用いて施している技術的制限手段については,日夜高度かつ多様な技術開発が進められているところであるが,現在及び近未来において商用化可能な技術の基本的な仕組みについて,その手段の使用の仕方の面から整理すると,概ね以下の2通りに整理することが可能である。 

  ① 音楽,映像等を視聴(プログラムについては,実行)又は記録を一律に禁止するために,その音楽,映像等とともに記録媒体に記録された信号に視聴又は記録に用いらる機器が反応する方式。 
 具体的には, 
 ○音楽,映像等が記録部分に伝送されることを止める(SCMS,CGMS) 
 ○真正なデータを伝送せず,雑音を入れる(不完全な複製を作る;マクロビジョン) 
 ○無許諾記録物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム) 
などがあげられる。 

  ② 特定の者に限り,音楽,映像等の視聴又は記録を可能とするために,その音楽,映像等を一定のルールで変換する方式,又はその音楽,映像等とともに記録媒体に記録された信号に視聴又は記録に用いられる機器が反応する方式。 

 具体的には,有料衛星放送のスクランブルなどが挙げられる。 

  C. したがって,今回の改正においては,上記2通りの使用態様に即して,技術的制限手段が規定されている。」(247~248頁) 
   イ 平成11年改正当時の無効化機器 

 (ア) 合同会議報告書 

 合同会議報告書(乙18)には,平成11年改正当時に問題とされた無効化機器として,以下の具体例が挙げられている。 

 「例えば,家庭用ゲームソフトウェアでは,正当に購入されたゲームソフトが一般のCD-Rに複製された場合,その複製物をゲーム機に装着しても使用できないように仕組まれているが,このような仕組みを働かなくするチップが広く販売されている。また,コンテンツが暗号化されている複数の有料衛星放送においても,正当な対価を支払わずに視聴を可能にする復号化装置がインターネット上で販売されている。」(2頁9~13行目) 

 (イ) 国会における審議 

 平成11年3月12日に開催された第145回国会衆議院商工委員会において,本件法改正当時の無効化機器について,以下の質疑応答がされている(甲37)。 

 「○奥谷委員 ...不正競争防止法の一部を改正する法律案につきまして,数点質問をさせていただきたいと思います。 
 ...今回の不正競争防止法改正の背景となっている不正な装置やプログラムの提供の実態について,具体的な事例で御説明をいただきたいと思います。 
 ○広瀬(勝)政府委員 お答え申し上げます。 
 具体的な例を挙げてみろということでございました。三つばかり例を挙げさせていただきたいと思います。 
 一つは,家庭用のゲーム機でございます。これは,ゲームのソフトをコンパクトディスクの形で販売しておるわけでございますけれども,このコンパクトディスク自体はパソコンなどで複製をつくることが可能なわけでございます。ただ,ゲームメーカーの方では,販売をする正規の製品につきまして,パソコンで複製することのできない特殊な信号をつけておるわけです。ゲーム機は,これを探知しましてゲーム機が動くというようなことになっておるわけでございます。 
 他方,こういう信号を検知するゲーム機の機能というのを妨害するようなチップが,雑誌等の広告あるいはインターネットなどで売られておりまして,そうなりますと,コピーされたコンパクトディスクによりましてゲームを勝手にやることができるというようなことになるわけでございます。 
 ... 
 したがいまして,ただいまこういう三つの事例を挙げさせていただきましたけれども,これを今度,不正競争防止法によりまして,不正競争ということに位置づけまして,差しとめ請求なり損害賠償なりができるようにさせていただく,そういうことによりましてデジタルコンテンツ提供業の健全な発展を図ろうということでございます。 
 ...ゲームソフトをただで見られるような,無断でやれるような装置,これをMODチップと言っておりますけれども,これは年間六十万個程度売られているのではないかというふうな推計をしております。」 

 (ウ) 改正解説 

 改正解説(乙17)には,本件法改正当時の技術的制限手段の具体例として,「映像系商品」について,「CGMS」(コピー・ジェネレーション・マネージメント・システム),「CSS」(コンテント・スクランブリング・システム),「オーディオ系商品」について「SCMS」(シリアル・コピー・マネージメント・システム)などのコピープロテクトが挙げられ,それぞれの無効化機器が販売されていることが記載されている(194~195頁)。さらに,「ゲーム系商品」について,以下の例が挙げられている。 
 「(1) ゲームマシンは,日本の3社,ソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE),セガ・エンタープライゼズ,任天堂が世界市場で大きなシェアを占めているが,任天堂は独自形状のROMカートリッジ,ソニーとセガはCD-ROMをメディアに採用している。 

  (2) この世界では,①違法コピーした海賊版ソフトの販売,②ソフトをコピーするためのコピーマシンの販売,③ソフトに組み込まれているコピープロテクトを回避するためのコピープロテクト解除部品の販売,④コピープロテクト解除部品を組み込んだ改造ゲームマシンの販売などが行われているが,特に日本では,③のコピープロテクトを解除するSS-KEY(セガ用),MODチップ(ソニー用)といった部品の販売が急増している。...」(196頁) 

 (エ) MODチップ 

 平成11年改正当時に具体例として挙げられているMODチップとは,ソニー製の家庭用ゲーム機であるプレイステーション等に対応する無効化機器である。
 
 当時,プレイステーション等に対応するゲームソフトは,パソコンでは複製できない特殊な信号を付して,コンパクトディスクに格納されていた。そして,ゲーム機は,この特殊な信号を探知してゲームのプログラムを実行するという技術的手段を用いていた。その結果,パソコン等でゲームソフトを複製しても,複製されたコンパクトディスクは特殊な信号を欠いているため,ゲーム機で実行することができなかった。
 
 MODチップをゲーム機に装着することにより,この特殊な信号を欠くためにゲーム機で実行できないはずのパソコン等で複製したプレイステーション等用のゲームソフトだけでなく,自主制作ソフト等も,プレイステーション等で実行することができた。 

 そして,MODチップにより自主制作ソフト等も実行することができることは,広く認識されていた。 
 (甲37,42,43,弁論の全趣旨) 

  (4) まとめ 

 上記(1)~(3)によれば,不正競争防止法2条1項10号は,我が国におけるコンテンツ提供事業の存立基盤を確保し,視聴等機器の製造者やソフトの製造者を含むコンテンツ提供事業者間の公正な競争秩序を確保するために,必要最小限の規制を導入するという観点に立って,立法当時実態が存在する,コンテンツ提供事業者がコンテンツの保護のためにコンテンツに施した無断複製や無断視聴等を防止するための技術的制限手段を無効化する装置を販売等する行為を不正競争行為として規制するものであると認められる。 

 そして,上記(3)のとおり,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,
 「(a)コンテンツに信号又は指令を付し,当該信号又は指令に機器を一定のルールで対応させる形態」と
 「(b)コンテンツ自体を暗号化する形態」の2つの形態を包含し,前者の例として,「無許諾記録物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」が挙げられているが,この例は,本判決の分類では,検知→可能方式である。そして,同立法当時,規制の対象となる無効化機器の具体例としてMODチップが挙げられているが,このMODチップは,本判決の分類にいう検知→可能方式のものを無効化するものであり,当初から特殊な信号を有しない自主制作ソフト等の使用も可能とするものであった。 

 以上の不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つであるMODチップを規制の対象としたという立法経緯に照らすと,
 不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,
 コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,
 検知→制限方式のものだけでなく,
 検知→可能方式のものも含む
と解される。 

  (5) 技術的制限手段該当性について 

 前提事実(3)によれば,原告仕組みは,以上のように解された不正競争防止法2条7項の技術的制限手段に該当し,同法2条1項10号の営業上用いられている技術的制限手段によりプログラムの実行を制限するとの点も満たしている。 

  (6) 被告らの主張についての判断 

 被告らは,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,検知→制限方式に限られ,自主制作ソフト等の実行も制限する結果となる検知→可能方式を含まない,平成11年改正法は,MODチップの販売等の規制を見合わせたものである旨主張する。
 
 しかしながら,前記(3)イ(ア)及び(イ)のとおり,合同会議報告書や国会における審議においては,MODチップが存在し,そのプログラムの実行を制限する動作が原告仕組みによる制限の動作と同じ検知→可能方式のものであることが記載されており,前記(3)ア(イ)及びイ(ウ)のとおり,改正解説にも,国会における審議等ほどには明確ではないが,事業者が用いている技術的制限手段又は方式の例として,「○無許諾記録物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」や「MODチップ」が記載されている。
 しかも,平成11年改正法の立法過程で,自主制作ソフト等の実行を可能とすることに意義を認めるなどして,検知→可能方式のものを規制の対象からはずし,検知→制限方式のもののみを規制の対象としたことをうかがわせる証拠は見いだせない。
 
したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 

 2 争点2(「のみ」要件)について 

  (1) 「のみ」要件について 

   ア 立法経緯 

 (ア) 合同会議報告書 
 合同会議報告書(乙18)には,立法過程における議論として,前記1(3)ア(ア)及びイ(ア)に加え,次の記載がある。 

 「(4)提供が禁止される機器等について 

  (ⅰ) 必要最小限度の規制を導入するという基本原則を踏まえ,規制の対象となる機器又はプログラムは,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供され,無効化以外には用途が経済的・商業的に見て存在しないものに限定することが適切である。 

  (ⅱ) 汎用の機器又はプログラムについては,規制の対象とすることは適当でないと考えられる。 

  (ⅲ) 無効化以外に用途が存在しない機器及びプログラムを構成部分とする(注3)機器及びプログラムの提供行為については,専用装置の提供行為と同視し,不正競争行為として規制の対象とすべきものと考えられる。 

 (注3)『無効化機器・プログラムを構成部分とする』とは,その無効化機器・プログラムが専ら無効化機能を発揮するよう一体的に組み込まれていることを指す。 

  (ⅳ) コピー管理又はアクセス管理のためにコンテンツに施されている信号を検知しない機器(いわゆる無反応機器)の問題については,『これらの機器(無反応機器)が規制されると,コンテンツ提供業者側が自らの利益確保のための信号を一方的に付することが許されるのに対して,機器の提供者側は,全てのコピー・アクセス機器が信号を検知しこれに従うよう措置するよう法的に強制されることとなり,バランスを欠くのではないか』との指摘があった。すなわち,無反応機器に対する規制をあえて行わず,結果として,例えばコンテンツ自体の暗号化のように,機器に追加的な機能を要求することなくコピー・アクセス管理を実現する管理技術が生き残ることを期待すべきだとする考え方である。これは,『今回の法規制導入に際しては,コンテンツ提供業者の十分な自助努力を前提とした取引の仕組みが醸成される環境作りを目指すべきである』との基本的な整理に立つものである。 
 機器提供者側の過大な負担を避けて無反応機器を規制する方法として,法令に基づき管理技術を指定した上でその管理技術への対応を機器メーカーに強制するというやり方があるとの指摘がある。しかし,こうした方法は指定されていない技術の開発自体を事実上停止し,結果として管理技術の進歩を止めてしまう恐れがある。 
 こうした点を踏まえ,無反応機器に対する規制は行わないことが適当である。」 
 (5~6頁) 

 (イ) 改正解説 

 a 改正解説(乙17の216~217頁)には,合同会議等での審議を踏まえ,改正において留意した点として,「(4) 提供が禁止される機器等について」の項目に,上記(ア)と同旨の記載がある。 

  b また,改正解説(乙17)には,不正競争防止法2条1項10号の「機能のみ」の意義について,次の記載がある。 

 「『のみ』がないと,技術的制限手段の使用目的に沿った効果を発揮することを妨げる機能以外
の機能も同時に持ち合わせている装置やプログラムを対象とすることになり,別の目的で製造され提供されている装置やプログラムが偶然『妨げる機能』を有している場合にも不正競争に該当することとなる。これを不正競争とすると影像や音の視聴,記録をするための装置やプログラムを提供する者が常に全ての技術的制限手段を『妨げる』機能を有するか否かを確認し,場合によっては提供を取りやめたり,提供する装置等の他の機能を歪める程度まで設計を変更することが必要となり,これらの提供者の事業活動を過度に抑制することとなるため,明確に『妨げる』機能のみを有することが認められている装置やプログラムを不正競争の対象とすることとしている。 

 なお,記録や視聴等の制限をするために付されている信号を検知しない装置やこれを内蔵する機器(いわゆる無反応機器)については,結果的に技術的制限手段の効果を妨げる機能を有することとなってしまう。しかしながら,これを規制すると記録や視聴等を制限するあらゆる信号に対応する措置を施すよう強制することとなるため,コンテンツ提供事業者の十分な自助努力を促す観点からも不正競争の対象としないことが適当である。無反応機器の場合は,技術的制限手段の効果を妨げる機能以外の機能を必ず有するため,『機能のみ』とすることにより対象から外れることとなる。」(240~241頁) 

   イ 解釈 

 (ア) 前記1(1)~(3)及び上記(1)アの立法趣旨及び立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能」を有している場合を除外していると解釈することができ,これを具体的機器等で説明すると,MODチップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができる。 

 (イ) 被告らは,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,検知→制限方式に限られ,平成11年改正法は,MODチップの販売等の規制を見合わせたものである旨主張するが,この主張に理由がないことは,前記1(6)で説示した点及び上記(ア)の立法経緯等から明らかであり,被告らの上記主張は採用することができない。 

  (2) 「のみ」要件該当性について 

   ア 前提事実(4)によれば,被告装置は,以上のように解された不正競争防止法2条1項10号の「のみ」要件を満たしている。 

   イ そして,この点は,被告装置の使用実態を併せ考慮しても同様である。すなわち,証拠(甲1~21,29,30,32,34~36,乙4~13,丙1,12~16,23~34,42)及び弁論の全趣旨によれば,数多くのインターネット上のサイトに極めて多数の本件吸い出しプログラムがアップロードされており,だれでも容易にダウンロードすることができること,被告装置の大部分が,そして大部分の場合に,本件吸い出しプログラムを使用するために用いられていることが認められ,被告装置が専ら自主制作ソフト等の実行を機能とするが,偶然「妨げる機能」を有しているにすぎないと認めることは到底できないものである。 

 3 争点3(営業上の利益の侵害)について 

  (1) 営業上の利益の侵害 

 前記2(2)イのとおり,数多くのインターネット上のサイトで極めて多数の本件吸い出しプログラムがアップロードされており,だれでも容易にダウンロードすることができ,被告装置の大部分が,そして大部分の場合に,本件吸い出しプログラムを使用するために用いられているものであるから,被告装置により,原告らは,DSカードの製造販売業者として,本来販売できたはずのDSカードが販売できなくなり,現実に営業上の利益を侵害されているものと認められる。原告任天堂は,DS本体の製造販売業者としても,原告仕組みの技術的制限手段が妨げられてその対策を講じることを余儀なくされ,現実に営業上の利益を侵害されているものと認められる。

  (2) 差止めの必要性 

 被告らは,現在,被告装置の輸入,販売を中止しているが(前提事実(2)ウ),本訴において,被告装置の輸入,販売等が不正競争防止法2条1項10号に違反することを争っており,本訴の提起により,一時的にその輸入,販売を停止しているにすぎないことは,当事者間に争いがないから,原告らは,営業上の利益を侵害する者であることが明らかな被告らに対し,被告装置の輸入,販売等の停止を求めることができる。 

  (3) 廃棄の必要性 

 そして,被告装置の輸入,販売等の侵害行為の停止に必要な措置として,侵害組成物件である被告らが所持する被告装置の廃棄が認められるべきである。 

 4 結論 

 よって,原告らの請求はいずれも理由があるからこれらを認容し,仮執行宣言については,主文第1項についてのみ付し,その余については相当でないから付さないこととし,主文のとおり判決する。 


三 マジコン「輸入禁止」へ法改正、財務省

 違法コピーしたゲームソフトを市販の携帯型ゲーム機で遊べるようにする「マジコン」などの回避機器について、財務省が、輸出入を禁止する関税法改正案を来年の通常国会に提出する方針を固めたことが18日、分かった。国内で流通しているマジコンの大部分は中国で製造されているとみられ、同省はマジコンを知的財産侵害物として明確に規定し、水際で流入を食い止める考えだ。

 [フォト]「マジコンは違法?」経産省と文化庁がパンフ作成
 一方、経済産業省も回避装置の製造・販売に刑事罰を科す方向で検討。マジコンをめぐっては、文部科学省が刑事罰の導入を盛り込んだ著作権法の改正で規制する方針を決めており、3省が連携して海賊版撲滅に向けた規制強化に乗り出す。

 「ニンテンドーDS」などの携帯ゲーム機は、複製ソフトの利用を防ぐ「アクセスコントロール」という機能を備えているが、マジコンを使えば制御機能を無効化し、インターネット経由で違法にコピーしたソフトが使えるようになる。

 社団法人「コンピュータエンターテインメント協会」(東京)によると、平成16~21年の6年間で、マジコンの国内被害額は少なくとも9540億円に上ると推計される。業界関係者によると、マジコン製造の拠点は主に中国にあるとみられ、日本国内ではすでに100万台以上が流通しているという。

 このため財務省は、現行法で対象になっていない回避装置について、新たに禁輸品として追加指定することを検討。各地の税関でマジコンの輸入を差し止めることができるようにする。違反した場合、現行法では10年以下の懲役か1千万円以下の罰金が科せられるが、改正案でも同等の罰則になる見通し。

 一方、経産省も不正競争防止法を改正し、マジコンの製造販売に刑事罰を科すことを検討。販売差し止めや損害賠償請求権など民事的な救済にとどまる現行法では抑止力が低く、野放し状態になっている実態を踏まえ、より実効性のある規制が必要と判断した。

 マジコン 携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の海賊版ゲームソフトを使えるようにする回避機器。DS専用ソフトと同じ形状で、語源は「マジックコンピューター」。海賊版ソフトのデータが入ったパソコン用記録カードを挿入してDS本体に差し込めば、ゲームができる。1個5千円程度で販売され、ネットなどを通じて簡単に手に入る。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101219-00000506-san-soci


投稿者 goemon : 2010年10月11日 07:43

« 9999-22違法情報と管轄警察・全国協働捜査方式など | メイン | 9999-24個別論点・ネット交番 »

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.ofours.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1620