IT技術者のためのデジタル犯罪論  弁護士 五右衛門(大阪弁護士会所属 服部廣志)

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デジタル犯罪論と構成要件

2 デジタル犯罪論と構成要件

 デジタル犯罪における中心的な課題は、前記のとおり、犯罪の構成要件の定め方に、従来のアナログ犯罪の場合以上の明確性、一義的、特定性が要求されるということである。

 従来のアナログ犯罪においては、通常の表記により、その構成要件が定める犯罪行為の内容が比較的容易に理解可能であり、罪刑法定主義の要請にも応えることが可能であった。

 しかしながら、デジタル犯罪の場合、不正アクセス行為に見られるように、「不正アクセス行為とは何なのか」、その犯罪の構成要件が、単なるアナログ表記では理解が困難というところに問題がある。

 それは、デジタル犯罪における行為は、アナログ的に理解困難な「キーボード上の入力行為の一部」を問題とするからなのである。

 「キーボード上の入力行為の一部」の行為が、問題とされ、場合により犯罪構成要件に該当すると判断されるに至るのであり、その構成要件該当性の判断にあたっては、今まで以上に、評価的要素が多く混入することになるからである。

 それは、従来のような、単なる規範的構成要件要素という類型の問題でもなく、まさにIT世界におけるIT評価的要素なのである。

 前記したとおり、具体的に取られている「ある利用制御」について、それが当時のIT技術水準のうえから、「利用制御をしている」と評価できるのか否か、という判断により、「制御」に該当するか否かが判断されることとなり、それは規範的構成要件要素というまえに、優れてIT評価的要素であり、IT評価的構成要件要素と言えるのである。

 このようなIT評価的構成要件要素は、罪刑法定主義の要請から、可能な範囲で、評価的要素を少なくすべきであり、そのためには、構成要件において、当該行為を特定ないし定義づけるための各要素についても可能な範囲で一義的、明確性が要求されることとなるのである。

 Accs事件において、セキュリテイホールと不正アクセス行為との関係について、立法担当者の思惑に疑問や疑義が生じるのは、立法担当者らが上記のようなIT評価的構成要件要素というようなデジタル犯罪における特質についての理解が不十分であったことが一因であるかもしれない。

 立法に関与する者は、上記に留意すべきなのである。

 

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