IT技術者のためのデジタル犯罪論  弁護士 五右衛門(大阪弁護士会所属 服部廣志)

  目  次

罪数

1 不正アクセス行為・私電磁的記録不正作出行為-併合罪

2 私電磁的記録不正作出罪・同供用罪・窃盗罪-牽連犯

1 不正アクセス行為と私電磁的記録不正作出行為

① 最高裁判所第二小法廷平成19年08月08日決定

 不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条所定の不正アクセス行為を手段として私電磁的記録不正作出の行為が行われた場合であっても,同法8条1号の罪と私電磁的記録不正作出罪とは,犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当であるから,本件につき両者を併合罪の関係にあるものとして処断した原判断は相当である。

② 牽連犯=刑法54条後段

刑法54条

 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

2  第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

 

③ 不正アクセス行為と電磁的記録不正作出罪その他の罪数関係は、現在、裁判例で、検討中といってもいい状況にある。

 上記最高裁判決を紹介する判例時報1987号のコメント欄に、これら罪数関係の裁判例の紹介とともに、上記最高裁判決のニュアンスの記載がある。

 上記最高裁判決について、最高裁調査官の判例解説の公刊が待たれるところである。

2 私電磁的記録不正作出罪・同供用罪・窃盗罪-牽連犯

① 東京地裁平成元年2月17日判決

本件は、当時、借金が嵩んでその返済のための金策に窮した被告人が、勤務先の同僚の所持するキャッシュカードを盗み出した上、そのコピーを作ってATM機から現金を引き出そうと企て、同僚の寝入っている隙に、キャッシュカードを盗み出し、勤務先のコンピューター機器を使用して右キャッシュカードの磁気ストライブ部分を有り合わせの他のカードに複写して電磁的記録を不正に作出した上、これを利用してATM機から現金8万円を窃取したという事案

 私電磁的記録不正作出とその供用と窃盗との間には、順次、手段結果の関係がある

 

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