JR大糸線の車窓から眺める北アルプスは、晴れ渡った夏空にくっきりと稜線を浮かび上がらせて爽やかだった。二十年前のあの頃と変わりはなかった。この稜線と青い空に生徒たちの屈託のない笑い声が加われば、全てがまったく二十年前と同じだった。啓介はふと溜め息を漏らした。胸がほろ苦く疼きだした。 《あの子たちはどうしているだろうか…》 間もなく松本駅に着くはずだった。胸の疼きに甘いものが加わった。すると、妙な混乱に囚われた。松本駅であの時の生徒たちが待っているような気がしてきた。啓介は目をつぶった。そして「時」をさかのぼり始めた 目次 ━ 初日 ━ ◇ 狸と河童が転びて、拳キチはフェロモンに酔う ◇ 女の大魔人が一喝し、骨に染み込む愛の液 ◇ 火事と喧嘩は江戸の華、尻出し女に発情せず ◇ 暗闇で貴方が欲しい、パンツの中の茹で玉子 ━ 二日目 ━ ◇ 風立ちて股間静まり、牡狸はパンティをはく ◇ 裸女が飛び出し、空から蛇が降ってくる ◇ 虫けらにもご褒美、股間に毛蟹が泡をふき ◇ 空クジでお化けに当選、蛙飛び込む黄金水 ◇ 夜の神社の赤蛍、暗闇の独り芝居で盛り上がり ◇ 真夜中の大相撲、濡れ場に高らかに屁は響く ━ 三日目 ━ ◇ 見上げれば青い空 あとがき |