満開の桜の樹の下で妖しげな美女が微笑むと、男達は血に狂って殺戮を重ね、闇夜の都大路を地獄の邏卒どもが亡者を引き連れて徘徊する。盗賊は坊主の生首を仏前に供えて酒を酌み交わし、飢えた者は我が子をも食らう。この世で地獄を送った者は、あの世では何処に行くのだろうか…。美と醜、生と死、信仰と背徳を問い掛けたダークファンタジー4編。
老いてなお胸ときめかすレモンの香、その香を残して去った女を捜し求めた青春の日々。
たまたま高野山のお堂で雨宿りしてた法師たちは語り出す。発心出家に至るまでの凄まじい過去を‥‥。ある法師は、叡山の山中で亡者を引き連れた鬼に出会い‥‥。ある法師は、老木の洞の鰻に魅入られて犯した悪行を‥‥。そして、ある法師は、さくらの杜で出会った女にあやつられるままの非道の限りを‥‥。人の生き方を狂わす悪意に満ちた存在のおぞましさと哀れな人の姿を描く。
受験勉強に喘ぎ、生きるのに疑い始めた青年に一縷の希望を抱かせた雪の停車場での女の残り香。
イタリアの片田舎の教会の鐘の音は、何世紀もの間、祈りをこめて鳴り続けている。だが、その祈りは成就したのだろうか…。
登山と空手に打ちこみ、真の男らしさに憧れる17歳の勲。一途な恋を求めながらも、股間の一物は所構わず勝手気ままにいきり立ち、戸惑わせる。そんな時、次々と魅惑的、肉感的な女たちが現れて彼を誘う。心と体は乱れ、勲は……。性への渇望と社会への不信、熱く猛々しい血肉に翻弄されながらも未来に夢を抱く青年の姿を描く。
卑劣な上司を殴り倒し、会社を辞めた啓介、正義感は強いが短気でやたらと女に弱い。田舎の高校教師に転身したものの、生徒たちばかりが青春じゃないと、悪ガキたちを引き連れての戸隠合宿で彼の胸にも青春の熱い炎が燃え上がる。拳法で鍛えた彼の拳はり、清純な乙女への思慕は高まり、醜女からの執拗な求愛を受け受けて、爽やかな夏の高原に恋の火花は飛び散る。青春の笑いと恋をコミカルに描く。