2011年12月の記事一覧

2011年12月16日に開催された「第10回医療計画の見直し等に関する検討会」での資料です。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yj85-att/2r9852000001yjdf.pdf

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「在宅医療の体制構築に係る指針」の骨子


第1 在宅医療の現場


1.在宅医療のニーズの高まり

(1)人口の高齢化
(2)疾病構造の変化
(3)在宅で実施可能な医療の拡充

2.在宅医療を支える機関

(1)退院支援

(2)日常の療養生活の支援

(a) 訪問診療・往診
(b) 訪問看護
(c) 訪問歯科診療
(d) 訪問薬剤管理指導
(e) 多職種協働(医療・介護の連携)
(f) 在宅医療連携拠点

(3)急変時の対応

(4)在宅における看取り
 
1.目指すべき方向
 前記「第1在宅医療の現状」を踏まえ、個々の医療機能、これを満たす関係機関、関係者の連携等により、在宅医療が円滑に実施される体制を整備する。

(1)円滑な在宅療養移行に向けての退院支援が実施可能な体制
  • 入院機関と、在宅医療の受け皿になる関係機関の協働による退院支援の実施

(2)生活の場における療養支援が可能な体制
  • 多職種協働による患者・家族の生活の視点に立った医療の提供
  • 地域における在宅医療に対する姿勢や原則の共有
  • 緩和ヶアの提供
  • 介護する家族の支援

(3)急変時の対応が可能な体制
  • 在宅療養中の患者の後方ベッド機能の確保

(4)患者が望む場所での看取りが実施可能な体制
  • 住み慣れた自宅や地域での看取りの実施

2.各医療機能と連携
 前記「目指すべき方向」を踏まえ、在宅医療提供体制に求められる医療機能を下記(1)から(4)に示す。都道府県は、各医療機能の内容(目標、関係機関等に求められる事項等)について、地域の実情に応じて柔軟に設定する。

(在宅医療連携拠点)
(1)から(4)までに掲げる目標の達成に向けて、地域の実情に応じ、病院、診療所、訪問看護ステーション、地域医師会等関係団体、保健所、市町村等の主体が在宅医療の連携拠点となり、多職種協働による包括的かつ継続的な在宅医療の提供体制の構築を図り、下記のような機能を担う。
  • 地域の医療・介護関係者による協議の場を定期的に開催し、在宅医療における連携上の課題の抽出及びその対応策の検討等を実施すること
  • 地域の医療・介護資源の機能等を把握し、地域包括支援センター等と連携しながら、退院時から看取りまでの医療・介護にまたがる様々な支援を包括的かつ継続的に提供するよう、関係機関との調整を行うこと
  • 質の高い在宅医療をより効率的に提供するため、24時間体制を構築するためのネットワーク化やチーム医療を提供するための情報共有の促進を図ること
  • 在宅医療に関する研修及び普及啓発を積極的に実施すること

(1)円滑な在宅療養移行に向けての退院支援が実施可能な体制

(a) 目標
  • 入院機関と、在宅医療の受け皿になる関係機関の円滑な連携により、切れ目のない継続的な診療・ケア体制を確保すること

(b) 関係機関に求められること
(病院・有床診療所等)
  • 退院支援を担う人材を配置すること
  • 退院支援担当者は、できる限り在宅医療・介護を担う関係機関での研修・実習を受けること
  • 入院初期から、退院後の生活を見据えた退院支援を開始すること
  • 退院支援の際には、患者の日常医療圏に配慮した在宅医療・介護サービスの調整を心がけること
  • 退院後起こりうる事態とその対応について等、退院前カンファレンスや文書・電話等で、在宅医療を担う関係機関との情報共有をしっかりと図ること

(在宅医療連携病院・診療所※)
※自らも在宅医療を提供し、かっ、他の医療機関の支援も行いながら、医療や介護の現場での多職種連携の支援を行う病院・診療所。
  • 病院・有床診療所等の退院支援担当者に対し、地域の在宅医療資源に関する情報提供や患者の在宅療養の視点からの助言を行うこと
  • 在宅での療養に移行する患者にとって必要な医療・介護の資源が十分確保できるよう、関係機関に働きかけること

(在宅医療を担う関係機関)
  • 在宅療養中の患者のニーズに応じて、相互に連携して医療と介護を包括的に提供できるよう、調整すること
  • 在宅医療・介護の担当者間で、今後の方針や病状に関する情報や計画を共有し、連携すること
  • 高齢者のみではなく、小児や若年の訪問診療、訪問看護等にも対応できるような体制を確保すること
  • 病院・有床診療所等の退院支援担当者に対し、地域の在宅医療資源に関する情報提供や患者の在宅療養の視点からの助言を行うこと(再掲)

(c)関係機関の例
  • 病院・有床診療所
  • 介護老人保健施設
  • 在宅医療連携病院・診療所
  • 在宅療養支援病院・診療所
  • 在宅医療を担う病院・診療所
  • 薬局
  • 訪問看護ステーション
  • 居宅介護支援事業所
  • 地域包括支援センター
※病院・診療所には、歯科を標榜するものを含む。以下同じ。

(2)生活の場における療養支援が可能な体制

(a)目標
  • 患者の疾患、重症度に応じた医療(緩和ヶアを含む)が多職種協働により、できる限り日常医療圏内で継続的、包括的に提供されること

(b)関係機関に求められること
(在宅医療連携病院・診療所)
  • 医療機関(特に一人の医師が開業している診療所)が必ずしも対応しきれない医師不在時や夜間の診療のサポートを行うこと
  • 地域包括支援センター等と協働しつつ、自立支援や家族の介護負担軽減につながるサービスに適切な紹介を行うこと
  • 在宅医療に従事する医療・介護関係者に必要な基本的知識・技能に関する研修の実施や情報の共有を行うこと
  • 卒後初期臨床研修制度(歯科の場合、卒後臨床研修制度)における地域医療研修において、在宅医療の現場での研修を受ける機会等の確保に努めること
  • 災害など有事の際にも適切な医療を提供するための計画(人工呼吸器等の医療機器を使用している患者の搬送等を含む)を策定し他の医療機関等の計画策定等の支援を行うこと
(在宅医療を担う関係機関)
  • 在宅医療を担う関係機関は、相互の連携により日常生活圏域で患者のニーズに対応した医療と介護が包括的に提供される体制の確保に努めること
  • がん(がんの緩和ケア体制等)、認知症(周辺症状のみならず、身体合併等に初期対応や専門医療機関への適切な紹介を行うこと)等、それぞれの疾患の特徴に応じた在宅医療の体制を整備すること
    ※がん患者の在宅医療については、がんの医療体制構築に係る指針を参照。
    ※うつ病患者、認知症患者等の精神疾患患者の在宅医療については、精神疾患の医療体制構築に係る指針を参照。
  • 災害など有事の際にも適切な医療を提供するための計画(人工呼吸器等の医療機器を使用している患者の搬送等を含む)を策定すること
  • 医薬品(麻薬や無菌調製を必要とする医薬品を含む)や医療材料・衛生材料等の供給を円滑に行うための体制を整備すること

(c)関係機関の例
  • 在宅医療連携病院・診療所
  • 在宅療養支援病院・診療所
  • 在宅医療を担う病院・診療所
  • 薬局
  • 訪問看護ステーション
  • 居宅介護支援事業所
  • 地域包括支援センター

(3)急変時の対応が可能な体制

(a)目標
  • 在宅療養中の患者の症状急変時に対応できるよう、在宅医療を担う病院・診療所、訪問看護ステーション及び入院機能を有する病院・診療所等との円滑な連携による診療体制を確保すること

(b)関係機関に求められること
(在宅医療を担う関係機関)
  • 在宅療養中の患者の急変時の連絡先をあらかじめ患者や家族に提示し、また求めがあった際に2 4時間対応できる体制を確保すること24時間対応が自院で難しい場合も、近隣の病院や診療所、訪問看護ステーション等との連携により、その体制を維持すること
  • 急変時のために、あらかじめ入院が可能な医療機関との連携を図っておくこと
  • 在宅療養中の患者の急変時における対応については、地域の消防関係者と協議し、症状や状況に応じて搬送先として想定される病院について確認し合うこと

(在宅医療連携病院・診療所)
  • 在宅療養中の患者の病状の急変等、医療機関(特に1人の医師が開業している診療所)が必ずしも対応しきれない場合のサポートを行うこと
  • 入院機能を有する在宅医療連携病院・診療所については、急変時の在宅療養中の患者の一時受入れ等を行うこと
  • 重症で対応できない場合は、他の適切な医療機関と連携する体制を構築すること

(急変時の受入れを行う病院・有床診療所等)
  • 普段から連携している医療機関(特に無床診療所)が担当する在宅療養者の病状が急変した際には、一時受け入れ等を行うこと
  • 重症で対応できない場合は、他の適切な医療機関と連携する体制を構築すること(再掲)

(c)関係機関の例
  • 在宅医療を担う病院・診療所
  • 在宅療養支援病院・診療所
  • 訪問看護ステーション
  • 在宅医療連携病院・診療所
  • 急変時の受け入れを行う病院・有床診療所
  • 介護老人保健施設

(4)患者が望む場所での看取りが実施可能な体制

(a)目標
  • 住み慣れた自宅や地域等、患者が望む場所での看取りを行うことができるよう支援すること

(b)関係機関に求められること
(在宅医療連携病院・診療所)
  • 地域住民に対し、療養生活の質を向上させる選択肢としての在宅における緩和ケアおよび看取りについて情報を提供すること
  • 医師、歯科医師、薬剤師、看護職員、ケアマネジャー、訪問介護職員等に、終末期の苦痛の緩和や看取りのケアの手法等に関する情報提供や研修を実施すること

(在宅医療を担う関係機関)
  • 患者、家族に対して、居宅等で受けられる医療、ケアおよび看取りに関する適切な情報提供を行うこと

(入院先となる病院・有床診療所)
  • 必ずしも在宅医療を担う関係機関で対応できない終末期の在宅療養患者については、入院機能を有する病院・有床診療所等で必要に応じて受け入れること

(c)関係機関の例
  • 在宅医療連携病院・診療所
  • 在宅療養支援病院・診療所
  • 在宅医療を担う病院・診療所
  • 訪問看護ステーション
  • 入院先となる病院・有床診療所


第3 構築の具体的な手順


(医療計画全体の見直しの方向性に沿って作成)

1.現状の把握


 都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、患者動向、医療資源及び医療連携等について、次に掲げる項目を参考に情報を収集し、現状を把握する。特に在宅医療を提供する病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護施設、訪問介護事業所等の日常生活圏域で患者のニーズに対応した医療と介護が包括的に提供される体制の確保を行い、カバー範囲を可視化して、検討することが推奨される。

(1)患者動向に関する情報
   検討中
(2)医療資源一連携等に関する情報
   検討中
(3)指標による現状把握
 (1)及び(2)の情報を基に、別表に掲げるような、病期・医療機能ごと及びストラクチャー・プロセス・アウトカムごとに分類された指標により、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握し、医療計画に記載する。その際、全都道府県で入手可能な必ず把握すべき指標(必須指標)と、独自調査やデータ解析等が必要となるが把握する必要性が高い指標(推奨指標)に留意して、把握すること。

2.医療機能の明確化および圏域の設定


(1)都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、「第2 関係機関とその連携」を基に、前記「1 現状の把握」で収集した情報を分析し、各区分(円滑な在宅療養移行に向けての退院支援・生活の場における療養支援・急変時の対応・患者が望む場所での看取り)に求められる医療機能を明確にして、圏域を設定する。

(2)医療機能を明確化するに当たって、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。逆に、圏域内に機能を担う施設が存在しない場合には、圏域の再設定を行うこともあり得る。

(3)圏域を設定するに当たって、在宅医療の場合、医療資源の整備状況や介護との連携のあり方が地域によって大きく変わることを勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、できる限り急変時(重症例を除く)の対応体制や医療と介護の連携体制の構築が図られるよう、地域の医療・介護資源等の実情に応じて弾力的に設定する。

(4)検討を行う場合は、地域医師会等関係団体、在宅医療・介護に従事する者、住民・患者、市町村等の各代表が参画する。


3.連携の検討


(1)都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、円滑な在宅療養移行に向けての退院支援・生活の場における療養支援・急変時の対応・患者が望む場所での看取りまで継続して医療が行われるよう、また、関係機関の信頼関係が醸成されるよう配慮する。
 さらに、在宅医療・介護の関係者および地域医師会等関係団体は、診療技術や知識の共有、連携する医療・介護の関係機関等との情報の共有に努める。

(2)保健所は、「地域保健法第4条第1項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成6年1 2月1日厚生省告示第3 7 4号)の規定に基づき、また、「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」(平成1 9年7月20日健総発第0720001号健康局総務課長通知)を参考に、医療連携の円滑な実施に向けて、地域医師会等関係団体と連携して医療機関相互の調整を行うなど、積極的な役割を果たすこと。

(3)医療計画には原則として、各医療機能を担う機関の名称を記載する。
 なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うこともある。
 さらに、関係機関の名称については、例えば圏域内に著しく多数の関係機関が存在する場合など、地域の実情に応じて記載することで差し支えないが、住民に分かりやすい周知に努めるものとする。

(以下、医療計画全体の見直しの方向性に沿って作成)

4.課題の抽出


5.数値目標


6.施策・事業


7.評価


8.公表


平成23年12月5日に開催された厚生労働省社会保障審議会第87回介護給付費分科会での資料です。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xc5b-att/2r9852000001xh2q.pdf

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平成24年度介護報酬改定に関する審議報告

社会保障審議会介護給付費分科会
       平成23年12月7日

介護保険の目的は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となった人びとが「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」ことであり、介護保険給付の内容及び水準は、「被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。」とされている。

平成24年度の介護報酬改定は、できる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す地域包括ケアシステムの構築を推進するとともに、本年6月に成立した「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う新たな介護サービス等への対応、診療報酬との同時改定に伴う医療と介護の機能分化・連携を強化することが必要である。

また、本年6月の社会保障・税一体改革成案において描かれた、介護サービス提供体制の効率化・重点化と機能強化に向けて、今回の介護報酬改定において必要な措置を講じることも課題である。

さらに、現在の日本が置かれている厳しい社会経済状況や東日本大震災の影響など、介護保険制度を取り巻く環境にも広く配意が必要である。

介護報酬の全体的な水準については、賃金・物価の下落傾向、介護事業者の経営状況の改善傾向などを踏まえつつ、介護給付費の増加による保険料の上昇幅をできる限り抑制する必要がある一方、介護職員の安定的な確保に向けて処遇改善を行う必要性は減じていないことにも留意して、適正なものとすることが必要である。

介護保険制度は、社会全体で連帯して支える仕組みであり、今後とも、保険料や費用を負担する主体から、介護保険制度への信頼が損なわれることのないよう考慮すべきである。
以上のような諸点を踏まえ、当分科会は、本年2月より17回にわたって、平成24年度の介護報酬改定について審議を重ね、平成24年度の介護報酬改定に関する基本的な考え方を以下のとおり取りまとめたので報告する。

なお、介護保険サービスを提供する関係者が参集した「介護保険サービスに関する関係団体懇談会」を3回、6年に1度の診療報酬との同時改定であることを踏まえ「中央社会保険医療協議会と介護給付費分科会との打ち合わせ会」を1回開催し、審議の助けとした。



1 基本的な考え方


平成24年度の介護報酬改定については、以下の基本的な視点に立った改定を行うことが必要である。


1. 地域包括ケアシステムの基盤強化


介護サービスの充実・強化を図るととともに、介護保険制度の持続可能性の観点から、給付の重点化や介護予防・重度化予防について取り組み、地域包括ケアシステムの基盤強化を図ることが必要である。

このため、高齢者が住み慣れた地域で生活し続けることを可能にするため、

(1) 高齢者の自立支援に重点を置いた在宅・居住系サービス
(2) 要介護度が高い高齢者や医療ニーズの高い高齢者に対応した在宅・居住系サービスを提供する。

また、重度者への対応、在宅復帰、医療ニーズへの対応など、各介護保険施設に求められる機能に応じたサービス提供の強化を図る。


2. 医療と介護の役割分担一連携強化


医療ニーズの高い高齢者に対し、医療・介護を切れ目なく提供するという観点から医療と介護の役割分担を明確化し、連携を強化することが必要である。

このため、

(1) 在宅生活時の医療機能の強化に向けた、新サービスの創設及び訪問看護、リハビリテーションの充実並びに看取りへの対応強化

(2) 介護施設における医療ニーズへの対応

(3) 入退院時における医療機関と介護サービス事業者との連携促進

を進める。

また、これらを実現するために、看護職員等医療関係職種をはじめ必要な人材確保策を講じることが必要である。


3. 認知症にふさわしいサービスの提供


認知症の人が可能な限り住み慣れた地域で生活を続けていくため、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設において必要な見直しを行う。

また、今後の認知症施策の方向性を考える上で、認知症の人への対応について、以下のような流れに沿った基本的枠組みが、全国で構築されることが必要である。

・在宅の認知症の人やその疑いのある人について、その症状や家族の抱える不安などの状況把握を行うとともに、専門医療機関における確定診断や地域の医療機関(かかりつけ医)からの情報提供を受け、対象者の認知症の重症度、状態等についてのアセスメントを行う。

・地域包括支援センター等を中心として、医療・介護従事者、行政機関、家族等の支援に携わる者や対象者が一堂に会する「地域ケア会議」を実施し、アセスメント結果を活用したケア方針(将来的に状態が変化し重症となった場合や緊急時対応等を含む。)を検討・決定する。

このような基本的枠組みを全国で構築していくためには、

(1) 認知症早期診断・治療、ケア体制の確立と認知機能の低下予防、
(2) 認知症にふさわしい介護サービス事業の普及、
(3) 認知症ケアモデルの開発とそれに基づく人材の育成、
(4) 市民後見人の育成など地域全体で支える体制の充実、

が必要であり、今後、調査・研究等を進め、次期介護報酬改定に向けて結論が得られるよう議論を行う。

4. 質の高い介護サービスの確保


介護サービスの質を評価するため、要介護度等の変化を介護報酬上評価することについて「介護サービスの質の評価のあり方に係る検討委員会」において検討が進められたが、要介護度等は様々な要因が複合的に関連した指標であり、その変化には時間がかかるとともに、利用者個人の要因による影響が大きいとの指摘がなされた。

しかしながら、介護サービスの質を向上させることは、大変重要な課題であるため、まずは、要介護認定データと介護報酬明細書(レセプト)データを突合させたデータベースの構築を図るなどの手段により、具体的な評価手法の確立を図る。



2 各サービスの報酬・基準見直しの基本方向


1. 介護職員の処遇改善等に関する見直し


(1) 介護職員の処遇改善に関する見直し

平成21年度補正予算において、介護職員の給料を月額平均1.5万円引き上げる、介護職員処遇改善交付金が政策措置として創設されたが、平成23年度までの時限措置であり、基本給の引き上げではなく、一時金や諸手当等により対応している事業者が多いという現状である。

介護職員の根本的な処遇改善を実現するためには、補正予算のような一時的な財政措置によるのではなく、事業者の自主的な努力を前提とした上で、事業者にとって安定的・継続的な事業収入が見込まれる、介護報酬において対応することが望ましい。

介護職員の処遇を含む労働条件については、本来、労使間において自律的に決定されるべきものである。他方、介護人材の安定的確保及び資質の向上を図るためには、給与水準の向上を含めた処遇改善が確実かつ継続的に講じられることが必要である。そのため、当面、介護報酬において、事業者における処遇改善を評価し、確実に処遇改善を担保するたに必要な対応を講ずることはやむを得ない。

これは、介護職員処遇改善交付金相当分を介護報酬に円滑に移行するために、例外的かつ経過的な取扱いとして設けるものである。


(2) 域区分の見直し

地域区分については、介護保険制度創設時は、国家公務員の調整手当(当時)に準拠していたことや、地域区分の実態調査結果では現行の地域割り(5区分)より国家公務員の地域手当(7区分)の方が実態に合致していることなどから、現在の特甲地の区分を3分割し、地域割りを7区分にする見直しを行う。また、適用地域や上乗せ割合についても、国家公務員の地域手当に準じた見直しを行う。さらに、適用地域について、国の官署が所在しない地域等においては、診療報酬における地域加算の対象地域の設定の考え方を踏襲する見直しを行う。

地域区分の見直しに伴い、報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、各自治体の意見を踏まえ、平成26年度までの経過措置等を設定する。


2. 居宅介護支援一介護予防支援


居宅介護支援については、自立支援型のケアマネジメントを推進する観点から、特定事業所加算により引き続き質の高い事業所について評価を行うとともに、サービス担当者会議やモニタリングを適切に実施するため、運営基準減算について評価の見直しを行う。

また、医療との連携を強化する観点から、医療連携加算や退院・退所加算について、算定要件及び評価の見直しを行う。併せて、在宅患者緊急時等カンファレンスに介護支援専門員(ケアマネジャー)が参加した場合に評価を行う。

介護予防支援については、地域包括支援センターの包括的・継続的ケアマネジメント支援の機能を強化するとともに、地域の実情に応じた対応を図る観点から、居宅介護支援事業所への委託制限(1人8件)を廃止する見直しを行う。

ケアマネジメントについては、利用者のニーズや課題に応じた適切なアセスメントができていないのではないか、サービス担当者会議における多職種協働か十分に機能していないのではないか、医療関係職種との連携が不十分なのではないか、施設におけるケアマネジャーの役割が不明確なのではないか等さまざまな課題が指摘されている。これらの課題に対して、介護報酬における対応に加えて、より根本的なケアマネジメントの在り方について検討し、必要な対応を図るべきである。施設におけるケアマネジャーの役割及び評価等のあり方については、次期介護報酬改定までに結論を得る。

次期介護報酬改定までの間に、地域包括支援センターを中心とした「地域ケア会議」等の取組みを通じて多職種協働を推進するとともに、保険者によるケアプランチェツク、ケアプランやケアマネジメントについての評価・検証の手法について検討し、ケアプラン様式の見直しなど、その成果の活用・普及を図る。また、ケアマネジャーの養成・研修課程や資格の在り方に関する検討会を設置し、議論を進める。

3. 訪問系サービス


(1) 訪問介護

生活援助の時間区分について、サービスの提供実態を踏まえるとともに、限られた人材の効果的活用を図り、より多くの利用者に対し、そのニーズに応じたサービスを効率的に提供する観点から、4 5分での区分を基本とした見直しを行う。なお、その際、今後とも利用者の心身の状況、生活環境や家族の状況を踏まえ、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づき、必要なサービスが提供されるよう配慮するものとする。

自立支援型のサービスの提供を促進し、利用者の在宅における生活機能向上を図る観点から、訪問リハビリテーション実施時にサービス提供責任者とリハビリテーション専門職が、同時に利用者宅を訪問し、両者の協働による訪問介護計画を作成することについての評価を行う。また、訪問介護員が生活機能向上に資する自立支援型のサービスを適切に実施できるよう、養成課程の見直し等、資質向上のための取組みを進める。

サービス提供責任者の質の向上を図る観点から、サービス提供責任者の任用要件のうち「2級課程の研修を修了した者であって、3年以上介護等の業務に従事した者」について、段階的に廃止する。また、人員配置基準については、利用者数に応じた基準に見直しを行う。なお、介護報酬の減算及び人員基準の見直しについては、現にサービス提供責任者として従事する者の処遇に配慮する観点から、経過措置を設ける。

1日複数回の短時間訪問により中重度の在宅利用者の生活を総合的に支援する観点から、新たに身体介護の短時間区分を創設する。なお、当該区分の算定に当たっては、早朝・夜間を含めた対応が可能な事業所において、定期的なサービス担当者会議によるアセスメントを義務付けるとともに、定期巡回・随時対応サービスへの移行を想定した要件を付すこととし、次期介護報酬改定において必要な対応を行うこととする。

(2) 訪問看護

短時間かつ頻回な訪問看護のニーズに対応したサービスの提供の強化という観点から、時間区分毎の報酬や基準の見直しを行う。

訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護について、時間区分及び評価の見直しを行う。

在宅での看取りの対応を強化する観点から、ターミナルケア加算の算定要件の緩和を行う。

また、医療機関からの退院後に円滑に訪問看護が提供できるよう、入院中に訪問看護ステーションの看護師が医療機関と協働した訪問看護計画の策定や初回の訪問看護の提供を評価するとともに、特別な管理を必要とする者についての対象範囲と評価の見直し、さらに、特別管理加算及び緊急時訪問看護加算については、区分支給限度基準額の算定対象から除外する見直しを行う。


(3) 訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションについては、利用者の状態に応じたサービスの柔軟な提供という観点から、リハビリ指示を出す医師の診察頻度を緩和するとともに、介護老人保健施設から提供する訪問リハビリテーションについては、病院・診療所から提供する訪問リハビリテーションと同様の要件に緩和する。

リハビリテーション専門職が、訪問リハビリテーション実施時に、訪問介護のサービス提供責任者と同時に利用者宅を訪問し、サービス提供責任者に指導及び助言を行うことについて評価を行う。

訪問リハビリテーションの提供状況の地域格差を是正する観点から、本体事業所と一体となったサテライト型の訪問リハビリテーション事業所の設置を可能とする見直しを行う。

(4) 居宅療養管理指導

居宅療養管理指導については、医療保険制度との整合院を図る観点から、居宅療養管理指導を行う職種や、居住の場所別の評価について見直しを行う。

居宅介護支援事業所との連携の促進という観点から、医師、歯科医師及び薬剤師が居宅療養管理指導を行った場合に、ケアマネジャー等への情報提供を必須とする見直しを行う。

小規模の薬局における対応を強化する観点から、緊急時など対応が困難な場合についてのみ、予め連携している別の薬局の薬剤師が提供することを可能とする見直しを行う。

看護職員による居宅療養管理指導については、算定要件の緩和を行う。

(※)訪問系サービス(居宅療養管理指導を除く。)については、サービス付き高齢者向け住宅等の集合住宅と同一建物に併設する事業所が、当該住宅等に居住する一定数以上の利用者に対しサービスを提供する場合の評価を適正化する。小規模多機能型居宅介護についても同様の見直しを行う。


4. 通所系サービス


(1) 通所介護

機能訓練指導員の多くを看護職員が兼務しているという実態や、看護職員が行う看護業務の実態を踏まえ、評価を見直すとともに、利用者の自立支援を促進するという観点から、利用者個別の心身の状況を重視した機能訓練(生活機能向上を目的とした訓練)を適切な体制で実施した場合の評価を行う。なお、今後、通所介護における機能訓練と通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションの実態を適切に把握し、それぞれの機能のおり方について検討を進める。

小規模型通所介護については、通常規模型通所介護事業所と小規模型通所介護事業所のサービス提供に係る管理的経費の実態を踏まえ、スケールメリットに着目した報酬設定は維持しつつも、その評価の適正化を行う。サービス提供時間の実態を踏まえるとともに、家族介護者への支援(レスパイト)を促進する観点から、サービス提供の時間区分を見直すとともに1 2時間までの延長加算を認め、長時間のサービス提供をより評価する仕組みとする。

併せて、事業者がより柔軟に事業を実施し、より効果的なサービス提供が可能となるよう、人員基準について、常勤換算方式の導入、単位ごとの配置から事業所ごとの配置へと見直しを行う。


(2) 療養通所介護

療養通所介護については、人材の効率的な活用という観点から、利用定員について見直しを行う。


(3) 通所リハビリテーション

通所リハビリテーションについては、医療保険から介護保険の円滑な移行及び生活期におけるリハビリテーションを充実させる観点から、リハビリテーションマネジメント加算や個別リハビリテーション実施加算の算定要件等について見直しを行う。併せて、サービ
ス提供時間ごとの評価の整合ト生を図る観点から、評価の見直しを行う。

また、手厚い医療が必要な利用者に対するリハビリテーションの提供を促進する観点から、要介護度4又は5であって、手厚い医療が必要な状態である利用者の受入れを評価する見直しを行う。

なお、サービスの質を評価する観点から、利用者の要介護度の変化を指標とした評価について検討を行ったが、明確な相関関係が認められなかったため、引き続き、評価の方法について検討を進める。

(※)通所系サービス事業所と同一建物に居住する利用者については、真に送迎が必要な場合を除き、通所系サービスに係る送迎分の評価の適正化を行う。



5. 短期入所系サービス


(1) 短期入所生活介護

短期入所生活介護については、緊急時の円滑な受入れを促進する観点から、緊急短期入所ネットワーク加算を廃止し、ケアマネジャーを含めた情報共有を推進するほか、一定割合の空床を確保している事業所の体制や、居宅サービス計画に位置付けられていない緊急利用者の受入れについて評価を行う。その際、常時空床のある事業所については算定しない仕組みとするなど、必要な要件を設定する。なお、この加算については施行後の実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う。

また、地域における柔軟なサービス提供を促進する観点から、基準該当短期入所生活介護の医師配置基準及び居室面積基準を緩和する見直しを行う。


(2) 短期入所療養介護

短期入所療養介護については、介護老人保健施設における医療ニーズの高い利用者の受入れを促進する観点から、病院、診療所における重度療養管理と同様の評価を行う。

また、緊急時の受入れを促進する観点から、緊急短期入所ネットワーク加算を廃止し、緊急時の受入れを評価する見直しを行う。


6. 特定施設入居者生活介護


特定施設入居者生活介護については、看取りの対応を強化する観点から、特定施設において配置看護師による看取り介護を行った場合に評価を行う。

さらに、要件を満たす特定施設については、家族介護者支援を促進する観点から、特定施設の空室における短期利用を可能とする見直しを行う。


7. 福祉用具貸与・特定福祉用具販売


福祉用具貸与については、利用者の状態に応じた福祉用具の選定や介護支援専門員等との連携を強化するため、福祉用具専門相談員に対し、利用者ごとに個別サービス計画の作成を義務付ける見直しを行う。

また、介護給付費通知の取組みや福祉用具の価格情報の公表等を通じて、価格の適正化に向けた取組みをさらに推進する。


8. 地域密着型サービス


(1) 定期巡回・随時対応サービス

定期巡回・随時対応サービスについては、日中・夜間を通じて1日複数回の定期訪問と随時の対応を介護・看護が一体的に又は密接に連携しながら提供するサービスであり、中重度者の在宅生活を可能にする上で重要な役割を担うサービスである。

利用者が、必要なタイミングで必要なサービスを柔軟に受けることを可能にするとともに、事業者の安定的運営を図る観点から要介護度別・月単位の定額報酬を基本とした報酬を設定するとともに、必要な人員・設備・運営基準を設定する。

人員基準については、訪問介護員等及びオペレーターについて、それぞれ常時1名を配置することとし、看護職員については、医療・看護ニーズへの対応のため、常勤換算2.5名以上の配置に加え常時オンコール体制を義務付ける。なお、定期巡回・随時対応サービス事業所と訪問介護・夜間対応型訪問介護・訪問看護事業所が一体的に運営される場合の職員の兼務を可能とする。

オペレーターの任用要件については、現行の夜間対応型訪問介護と同様の有資格者を1名以上配置することとし、地域の実情に応じた人材確保が可能となるよう当該職員や訪問看護の看護職員との連携を確保した上で、当該職員が配置されていない時間帯については、訪問介護のサービス提供責任者として3年以上の経験を有する者を配置することを認める。

なお、オペレーター資格のおり方については、サービスの実施状況を検証し、必要な対応を行う。

また、施設等の地域を支える機能や特に夜間等における人材の有効活用を図る観点から介護老人福祉施設、介護老人保健施設等の施設・事業所に従事する夜勤職員について、利用者の処遇に影響のない範囲内において定期巡回・随時対応サービスのオペレータ一等との兼務を可能とする。

また、区分支給限度額の範囲内で柔軟に通所・短期入所系サービスを利用者の選択に応じて提供することを可能とするための給付調整を行う。これらのサービス利用時には日割り計算を実施する。

サービス付き高齢者向け住宅等の集合住宅と同一建物に併設する事業所が当該住宅に居住する利用者に対してサービス提供を行う場合、地域包括ケアの推進の観点から地域への展開に努めるものとする。

また、サービス付き高齢者向け住宅への良質なサービスの提供状況や、定期巡回・随時対応サービスの実施状況について、適切に実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う。


(2) 複合型サービス

小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能を有した複合型サービスについては、利用者の状態に応じた通い・泊まり・訪問(介護・看護)サービスを柔軟に提供する観点から、要介護度別・月単位の定額報酬を基本とした報酬を設定するとともに、医療ニーズの高い利用者に対し、適切なサービス提供が可能となるような人員・設備・運営基準を設定する。

登録定員および従事者の配置数等については、原則として小規模多機能型居宅介護に準ずるものとする。

医療・看護ニーズへの対応のため、看護職員の配置等については以下のとおりとする。

(1) 看護職員は2.5名(うち1名は看護師又は保健師)を基準とし、訪問(看護)サービスの看護職員による24時間対応体制の確保をしている場合には高い評価を行う。

(2) 泊まりサービスの看護職員については、夜勤・宿直の配置の限定をせず、必要に応じて対応できる体制の確保を基準とする。

(3) 柔軟な人員配置のため、訪問看護事業所と一体的な運営をしている場合には、兼務を認める。

(4) 管理者については、常勤専従とし、(a)認知症の利用者に対する3年以上の介護経験を有し研修を修了した者、又は(b)訪問看護の知識と技能を有する保健師又は看護師のいずれかを選択できるものとする。

必要な設備、施設については、小規模多機能型居宅介護及び訪問看護の基準に準ずるものとする。

複合型サービス事業所に配置された看護職員は訪問看護指示書により、医師からサービス利用時の指示を受けることで事業所内でも日常生活を送る上で必要不可欠な診療の補助を行い、実施した看護内容等については主治医に報告を行う仕組みとする。

また、事業開始時支援加算について、小規模多機能型居宅介護と同様に平成2 7年3月
末までの時限措置として設定する。

複合型サービスの実施状況について、適切に実態把握を行い、必要に応じて適宜見直し
を行う。


(3) 小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護については、認知症高齢者等の在宅生活を支える重要なサービスとして更なる普及を促進する必要がある。一定程度の事業規模を確保し、人材の有効活用を進めることにより経営の安定化を図りつつ、利用者にとってより身近な地域でのサービス提供が可能になるよう、サテライト型の小規模多機能型居宅介護事業所を創設する。

なお、サテライト型の実施についてはサービスの質の確保を図る観点から、医療・介護・福祉サービスについて3年以上の実績を有する法人であり、本体事業所が安定したサービス提供を行っている場合に限るものとする。

また、事業開始時支援加算については平成2 4年3月末までの時限措置としていたが、今後増加が見込まれる認知症高齢者等の在宅サービス基盤のさらなる充実を図る観点から、要件について見直しを行った上で平成2 7年3月末まで継続する。

なお、小規模多機能型居宅介護の看護職員に対する評価については、次期介護報酬改定において、複合型サービスの整備・運営状況等を勘案し必要な対応を行う。


(4) 認知症対応型共同生活介護

認知症対応型共同生活介護については、介護保険制度開始当初は、利用者の平均要介護度が比較的軽度であったが、利用者の平均要介護度の高まりへの対応を強化する観点から、フラット型となっている現行の要介護度別の基本報酬体系を見直すとともに、ユニット数別の報酬設定による適正化を図る。併せて、看取りの対応を強化する観点から、看取り介護加算の評価を見直し、認知症対応型共同生活介護事業所の配置看護師又は近隣の訪問看護事業所との連携により看取りを行う。

さらに、夜間における利用者の安全確保を強化する観点から、夜勤職員の配置基準の見直しを行うとともに、夜間ケア加算の見直しを行う。

また、認知症対応型共同生活介護の在宅支援機能の強化を図る観点から、短期利用共同生活介護及び共用型認知症対応型通所介護の事業実施要件として設定されている「事業所開設後3年以上」の規定の緩和を行う。


9. 介護予防サービス


(1) 訪問系サービス

介護予防訪問介護については、生活機能の向上などにより、利用者の自立を促すサービスを重点的かつ効果的に提供する観点から、訪問介護の見直しとの整合匪を図ることを含め、その在り方について見直しを行う。

サービス提供責任者とリハビリテーション専門職との協働による訪問介護計画の作成に対する評価や、サービス提供責任者の任用要件や、人員配置基準について、訪問介護と同様の見直しを行う。

介護予防訪問リハビリテーションについては、訪問リハビリテーションと同様の見直しを行う。

また、サービス付き高齢者向け住宅等の集合住宅と同一建物に併設する事業所が、当該住宅等に居住する一定数以上の利用者に対しサービスを提供する場合の評価については、訪問系サービスと同様に適正化する。

さらに、介護予防や生活機能の維持・改善に効果が高いサービスや生活援助の提供の在り方について、検証・見直しを行う。


(2) 通所系サービス

介護予防通所介護及び介護予防通所リハビリテーションについては、生活機能の向上などにより、利用者の自立を促すサービスを重点的かつ効果的に提供する観点から、選択的サービスのうち、複数のプログラムを組み合わせて実施した場合の評価を創設するとともに、通所介護、通所リハビリテーションと同様に、基本サービス費の適正化及びサービス提供事業者と同一建物に居住する利用者について、送迎分の適正化を行う。併せて事業所評価加算の算定要件の見直しを行う。

また、介護予防通所介護については、アクティビティ実施加算を見直し、新たに生活行為向上プログラムを評価するとともに、人員配置基準について、通所介護と同様の見直しを行う。

さらに、介護予防に効果があるものに重点化する観点から、介護予防や生活機能の維持・改善に効果の高いサービス提供の在り方について、検証・見直しを行う。


10. 介護保険施設


介護保険施設については、介護施設の重点化や在宅への移行を促進する観点から、見直しを行う。その上で「生活重視型の施設」又は「在宅復帰支援型の施設」として、医療提供の在り方を含め、各施設の機能に応じた評価を行う。

(1) 介護老人福祉施設

介護老人福祉施設については、対象となる者などの要件を適切に設定した上で、終末期における外部の医師によるターミナルケア等を推進するなど、施設における看取りの対応を強化する。

介護老人福祉施設の入所者の重度化に対応し、施設の重点化・機能強化等を図る観点に立って、要介護度別の報酬の設定を行う。

要介護高齢者の尊厳の保持と自立支援を図る観点からは、居宅に近い居住環境の下で、居宅における生活に近い日常生活の中で入所者一人ひとりの意思と人格を尊重したケアを行うことが求められている。さらに、多床室と個室では入所者1人当たりのコストに差がある。これらに鑑み、ユニット型個室、従来型個室、多床室の順となるように報酬水準を適正化する方向とし、ユニット型個室の第3段階の利用者負担を軽減することを検討するなど、ユニット型個室の更なる整備推進を図る必要がある。
 
なお、その場合、国の定める居室定員の基準が「1名」となる平成24年4月1日以前に整備された多床室については、当面、新設のものに比して報酬設定の際に配慮した取扱いとする。

認知症の症状が悪化し、在宅での対応が困難となった場合の受入れについて評価を行う。

(2) 介護老人保健施設

介護老人保健施設については、在宅復帰支援型の施設としての機能を強化する観点から、在宅復帰の状況及びベッドの回転率を指標とし、機能に応じた報酬体系への見直しを行う。

また、在宅復帰・在宅療養支援機能を強化するため、在宅復帰支援機能加算の算定要件の見直しを行う。併せて、入所中に状態が悪化し、医療機関に短期間入院した後、再度入所した場合の必要な集中的なリハビリテーションを評価するとともに、別の介護老人保健施設に転所した場合の取扱いを適正化する見直しを行う。

入所前に入所者の居宅を訪問し、早期退所に向けた施設サービス計画の策定及び診療方針を決定した場合、並びに地域連携診療計画に係る医療機関から利用者を受入れた場合について評価を行う。

また、入所者の医療ニーズに適切に対応する観点から、肺炎や尿路感染症など軽症の疾病を発症した場合における施設内での対応について評価を行う。
認知症の症状が悪化し、在宅での対応が困難となった場合の受入れ及び在宅復帰を目指したケアについて評価を行う。

施設における看取りの対応を適切に評価する観点から、ターミナルケア加算について算定要件及び評価の見直しを行う。


(3) 介護療養型老人保健施設一介護療養型医療施設

介護療養型老人保健施設については、医療ニーズの高い利用者の受入れを促進する観点から、機能に応じた報酬体系に見直しを行う。その際、評価を高くする基本施設サービス費については、喀痰吸引・経管栄養を実施している利用者割合及び認知症高齢者の日常生活自立度を算定要件とする。

介護療養型医療施設については、適切に評価を行う。また、認知症の症状が悪化し、在宅での対応が困難となった場合の受入れについて評価を行う。

また、介護療養型医療施設から介護療養型老人保健施設への転換を支援する観点から、
有床診療所を併設した上で転換した場合に、増床が可能となるよう見直しを行う。

さらに、介護療養型老人保健施設における看取りの対応を強化する観点から、ターミナルケア加算について算定要件及び評価の見直しを行う。

なお、現在実施している施設基準の緩和等の転換支援策については、平成30年3月31日まで引き続き実施する。また、経過型介護療養型医療施設について、平成30年3月31日まで転換期限を延長し、新規指定を認めないこととする。


11. 経口移行・維持の取組


介護保険施設における経口維持、経口移行の取組みを推進し、栄養ケア・マネジメントの充実を図る観点から、経口維持加算及び経口移行加算については、言語聴覚士との連携を強化し、経口維持加算については歯科医師との連携の算定要件を見直す。


12. 口腔機能向上の取組


介護保険施設の入所者に対する口腔ケアの取組みを充実する観点から、口腔機能維持管理加算について、歯科衛生士が入所者に対して直接口腔ケアを実施した場合の評価を行う。

13. 介護職員によるたんの吸引等の実施について


社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正によって、介護福祉士及び研修を受けた介護職員等が、登録事業所の事業の一環として、医療関係者との連携等の条件の下にたんの吸引等を実施することが可能となったことに伴い、介護老人福祉施設及び訪問介護の既存の体制加算に係る重度者の要件について、所要の見直しを行う。

また、介護職員によるたんの吸引等は、医師の指示の下、看護職員との情報共有や適切な役割分担の下で行われる必要があるため、訪問介護事業所と連携し、利用者に係る計画の作成の支援等を行う訪問看護事業所について評価を行う。

なお、制度の施行後、教育や研修の状況、介護職員の処遇等を含めた事業所における体制について、適切に実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う。


今後の課題


以上、平成24年度の介護報酬改定の基本的な考え方及び各サービスの報酬・基準の見直しの方向について取りまとめた。当分科会としては、今回の介護報酬改定を通じて、高齢者の「尊厳保持」、「自立支援」という介護保険制度の基本理念が一層追求され、質の高いサービスが提供されることを強く期待する。

その上で、できる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す地域包括ケアシステムの構築を推進するために、次回の介護報酬改定までに検討を進めるべき事項について、以下のとおりまとめたので、着実に対応を進めることが求められる。

○認知症にふさわしいサービスの提供を実現するため、調査・研究等を進め、次期介護報酬改定に向けて結論が得られるよう議論を行う。

○介護サービスの質の向上に向けて、具体的な評価手法の確立を図る。また、利用者の状態を改善する取組みを促すための報酬上の評価の在り方について検討する。

○ケアプランやケアマネジメントについての評価・検証の手法について検討し、ケアプラン様式の見直しなど、その成果の活用・普及を図る。また、ケアマネジャーの養成・研修課程や資格の在り方に関する検討会を設置し、議論を進める。

○集合住宅における訪問系サービスの提供の在り方については、適切に実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う。

○サービス付き高齢者向け住宅や、定期巡回・随時対応サービス、複合型サービスの実施状況について、適切に実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う。

○介護事業所、介護施設における医師・看護職員の配置の在り方については、医療提供の在り方の検討と併せて、適切に実態把握を行い、必要に応じて見直しを行う。

○生活期のリハビリテーションの充実を図るため、施設から在宅まで高齢者の状態に応じたリハビリテーションを包括的に提供するとともに、リハビリ専門職と介護職との連携を強化するなど、リハビリテーションの在り方について検討する。さらに、リハビリテージョンの効果についての評価手法について研究を進める。

○予防給付は、介護予防や生活機能の維持・改善に効果があるものに更に重点化する観点から、効果が高いサービス提供の在り方について、引き続き検証・見直しを行う。

平成23年12月5日に開催された厚生労働省社会保障審議会第87回介護給付費分科会での資料です。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xc5b-att/2r9852000001xc7g.pdf

平成24年度介護報酬改定に関する審議報告(概要)


介護保険制度の基本理念


介護保険の目的は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となった人びとが「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」ことであり、介護保険給付の内容及び水準は「被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。」とされている。



基本認識


1.地域包括ケアシステムの構築を推進するとともに、本年6月に成立した「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う新たな介護サービス等への対応、診療報酬との同時改定に伴う医療と介護の機能分化・連携を強化する。

2.また、本年6月の社会保障・税一体改革成案において描かれた、介護サービス提供体制の効率化・重点化と機能強化に向けて、必要な措置を講じる。

3.さらに、現在の日本が置かれている厳しい社会経済状況や東日本大震災の影響など、介護保険制度を取り巻く環境にも広く配意する。



基本的な考え方及び重点課題


介護保険制度の基本理念を追求するため、以下の基本的な考え方に則った改定を実施する。

1.地域包括ケアシステムの基盤強化

高齢者が住み慣れた地域で生活し続けることを可能にするため、
(1)高齢者の自立支援に重点を置いた在宅・居住系サービス
(2)要介護度が高い高齢者や医療ニーズの高い高齢者に対応した在宅・居住系サービスを提供する。

また、重度者への対応、在宅復帰、医療ニーズへの対応など、各介護保険施設に求められる機能に応じたサービス提供の強化を図る。

2.医療と介護の役割分担一連携強化

医療ニーズの高い高齢者に対し、医療・介護を切れ目なく提供する観点から、医療と介護の役割分担を明確化し、連携を強化するため、

(1)在宅生活時の医療機能の強化に向けた、新サービスの創設及び訪問看護、リハビリテーションの充実並びに看取りへの対応強化、

(2)介護施設における医療ニーズへの対応、

(3)入退院時における医療機関と介護サービス事業者との連携促進、を進める。
また、これらを実現するために、看護職員等医療関係職種をけじめ必要な人材確保策を講じることが必要である。
                     
3.認知症にふさわしいサービスの提供

認知症の人が住み慣れた地域で可能な限り生活を続けていくため、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設において必要な 見直しを行う。

4.介護職員の処遇改善等に関する見直し

(1)介護職員の処遇改善に関する見直し
 職員の根本的な処遇改善を実現するためには、補正予算のような一時的な財政措置によるのではなく、事業者の自主的な努力を前提とした上で、事業者にとって安定的・継続的な事業収入が見込まれる、介護報酬において対応することが望ましい。

護職員の処遇を含む労働条件については、本来、労使間において自律的に決定されるべきものである。他方、介護人材の安定的確保及び資質の向上を図るためには、給与水準の向上を含めた処遇改善が確実かつ継続的に講じられることが必要である。そのた め、当面、介護報酬において、事業者における処遇改善を評価し、確実に処遇改善を担 保するために必要な対応を講ずることはやむを得ない。
 
れは、介護職員処遇改善交付金相当分を介護報酬に円滑に移行するために、例外的かつ経過的な取扱いとして設けるものである。

(2)地域区分の見直し
 域区分については、現在の特甲地の区分を3分割し、地域割りを7区分にする見直しを行う。また、適用地域や上乗せ割合についても、国家公務員の地域手当に準じた見直しを行う。さらに、適用地域について、国の官署が所在しない地域においては、診療報酬における地域加算の対象地域の設定の考え方を踏襲する見直しを行う。

 地域区分の見直しに伴い、報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、各自治体の意見を踏まえ、平成26年度までの3年間は経過措置を設定する。



今後の主な検討課題


次回の介護報酬改定までに、以下の事項について、着実に検討を進めることが必要。

・認知症早期診断・治療、ケア体制の確立と認知機能の低下予防、介護サービス事業の普及、認知症ケアモデルの開発とそれに基づく人材の育成、市民後見人の育成など地域全体で支える体制の充実

・介護サービスの質の向上に向けた具体的な評価手法の確立や、利用者の状態を改善する取組みを促すための報酬上の評価

・ケアプランやケアマネジメントの評価・検証手法の検討や、ケアプラン様式の見直しなどによる成果の活用・普及

・介護事業所、介護施設における医師・看護師の配置の在り方の検討・見直し

・施設から在宅まで高齢者の状態に応じたリハビリテーションの包括的提供、リハビリ専門職と介護職との連携強化、リハビリテーションの効果の評価手法の研究

・効果が高い介護予防サービス提供の在り方の検証・見直し

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