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介護保険制度改正に向けて「お泊まりデイサービス」の現在の論点

「お泊まりデイサービス」は、24時間地域巡回型の訪問サービスと併せて介護保険の適用が検討されており、平成24年度から介護保険内で扱うことが検討されていましたが、実施は難しくなりました。

現在の「お泊りデイサービス」とは、通常の"デイサービス(通所介護)"に、宿泊機能をつけたものです。デイサービス自体は介護保険の対象ですが、お泊りしている時間帯は介護保険制度のサービスではありません。自費サービスとなるため、宿泊価格の設定も自由にできるようになっています。このようなサービスがここ数年で全国的に増えています。

なぜ、そういったサービスが増えているのか、考えられる理由として、?ショートステイの空きが少ない、?なじみのない場所では混乱する認知症の方が利用しやすい、などが挙げられます。また、特養やショートステイを使うよりも、小規模の通所介護事業所の1日の単価の方が高いという実態もあります。さらに、デイサービスに宿泊することで、自宅へ送迎することもなく、事業所としても職員の業務が軽減されることになります。こういったことから、特養の入所待ちにお泊りデイサービスを連泊で利用するという介護保険制度の趣旨と違った使い方がされているのも実情です。

デイサービスに宿泊の機能を持たせることは、小規模多機能型居宅介護とのすみ分けにおいて、訪問サービス部分がない以外は同じ機能を持つようになります。お泊りデイサービスを介護保険で適用することは、小規模多機能型居宅介護と非常に類似性の高い事業モデルであり、利用者のすみ分けが難しくなるのではないかと考えられています。

小規模多機能型居宅介護と現在のお泊りデイサービスで大きく違う点としては、お泊りデイサービスでは、一つの部屋に多人数で宿泊したり、職員体制も十分ではないなど、宿泊する高齢者の方々にとっては好ましくない環境で過ごさなければならないということが挙げられます。

以下は小規模多機能型居宅介護とお泊りデイサービスの比較となります。

内容
小規模多機能型居宅介護
お泊りデイサービス(通所介護)
特徴
登録した利用者は通い・宿泊・訪問サ?ビスの複合サ?ビスを提供することができる。 介護保険外なので誰でも自由に利用できる。
メリット
通所介護に比べ、訪問、宿泊に対応でき複合的なサ?ビスを提供が可能。 空きがあればいつでも利用が可能。
デメリット
介護報酬が定額制であり、利用限度額がないので、ケアプランの作り方、サ?ビス提供の仕方によ り経費が左右されることもある。 指定基準が無いため、事故があった場合に対処できない 可能性がある。
定員
登録定員 25人以下 制限無し。
人員
人員配置基準あり。 宿泊サービスでは基準なし。
設備
設備基準あり 宿泊サービスでは基準なし。
報酬
月単位の包括報酬額 自由に料金設定が可能。




1.お泊りデイサービスが求められている理由

  1. 介護保険外のサービスであるから規制がなく、宿泊の費用が安い。
  2. ショートステイは利用希望が多く2か月前に予約しないと使えないなど、家族の病気や親類の葬儀など緊急時に家族の休息に使われるショートステイのサービスは緊急利用が難しいため。また、ショートステイなどの日頃使い慣れない施設では状態が悪化することもあるため、使い慣れたデイサービスを利用したい。
  3. 認知症の人が泊まりも通いもできるよう作られた「小規模多機能型居宅介護」は開設要件が厳しく、数が増えないため利用できる事業所が無い。



2.現在のお泊りデイサービスの問題点

  1. 男女を同じ部屋で宿泊させたり、宿泊専用の部屋がなく、食堂や機能訓練室に簡易ベッドや布団を敷いて寝泊まりさせたりするケースがあるなど、環境整備がされていない。
  2. 介護保険制度外のために人員配置基準が無い。
  3. 宿泊する利用者の平均要介護度は要介護度が高い傾向があり、夜間のスタッフが緊急時に対応しきれない危険がある。
  4. 通所(日帰り)を原則とする福祉施設のお泊まりデイサービスが、入所型施設に入れない高齢者の受け皿となっている。


これらのニーズと問題点を解決するために「お泊りデイサービス」を介護保険内で対応するかどうか議論されています。
「お泊りデイサービス」の名称で示された案は、既存のデイサービスの利用時間を現状の10時?17時から10時間以上延長し、"通い"でも"泊まり"でも利用できる24時間体制とするものです。利用者は顔なじみのスタッフがいる通い慣れた設備で宿泊することができ、急な残業や通勤などでデイサービスの送迎時間に間に合わない家族の負担を軽減し、レスパイトケアの充実を図ります。従来のショートステイもこれまで通り利用可能ですが、緊急時に空きベッドを確保することは困難なため、デイサービスを利用して 急な預かりニーズに対応することを目的としています。



3.在宅・地域密着型サービスのあり方をテーマに社会保障審議会介護保険部会で議論されている具体的な意見

  • 「特別養護老人ホームの待機者がデイサービスで1カ月宿泊しているケースもある」
  • 「同案は小規模多機能型居宅介護事業所の"訪問"がないだけで"通い"と"泊まり"は共通だ。介護報酬的にも定額制の小規模多機能型との整合性はとれるのか」
  • 「ショートステイは半年前から予約を受け付けているが、それでも満員で利用者の預け入れにケアマネジャーは苦慮している」
  • 「男女を同じ部屋で宿泊させていたケースがある」
  • 「泊まりが必要ならショートステイ(短期入所)で対応すべきだ」
  • 「家族の病気や休息のためのサービスが必要」
  • 「介護負担が減れば施設入所の要望も緩和される」

このように、現在は平成24年度介護保険制度改正に向けて議論されている段階であり、今後の動向につきましては、情報が入り次第また取り上げていきたいと思います。

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