IT技術者のためのデジタル犯罪論  弁護士 五右衛門(大阪弁護士会所属 服部廣志)

  目  次

一 デジダル犯罪と裁判所

 コンピューターを利用した犯罪について、さまざまな刑事判決がなされてきている。その多くは、既存の法律解釈の延長上にある判決であり、特段、特筆すべきものはないように思える。

しかしながら、コンピューター利用の犯罪についての判決のなかで、児童ポルノ犯罪や公然わいせつ物陳列罪などに関する刑事判決は、その児童ポルノないしわいせつ物と判示するデジタルデーターについての理解の仕方と児童ポルノ禁止法などの刑罰法規の保護法益との関係の理解の仕方などに関連して、その評価、解釈論、特に罪数論が、日和見的に行われてきているように思える。

 本書は、ポルノ犯罪やわいせつ犯罪を解説しょうとするものではないので、その詳細は割愛することとするが

イ 児童ポルノ規制についての法律、「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が、既存の刑法におけるわいせつ分陳列、頒布の罪や、強制わいせつ罪というようなわいせつ犯罪の構成要件ないし法定刑との十分な連携ないし適用対象の棲み分けを行われずに制定ないし運用されているのではないかとの疑念を払拭できない感じがする。
特に、法益の把握などとの関連において、裁判所の罪数論は混沌としているように見える。
この点については、大阪弁護士会所属の奥村徹弁護士のBlog(http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/)に詳細に、判決文などが掲載されている。

ロ 上記に加えて、裁判所は、コンピューター犯罪における行為というか、インターネットの構造というか、ファイルの送受信という構造を、あるときは、無視し、あるときは、直視してきているようにも見える。
その直視の有無と程度により、上記のように法的評価、罪数論の結論が異なっているようにも思えるのである。

ハ これらコンピューター犯罪とも称すべき犯罪については、本来、無色透明とも言うべきデジタルデーターの社会に顕現する態様とその特徴を正確に把握する必要があるとともに、その顕現する態様、それを呼び起こす行為の法益侵害の態様と特徴などを把握したうえで、犯罪論を展開する必要がある。

ニ また、コンピューター世界における犯罪の成否、特に不正アクセス禁止法違反の有無等については、コンピューターシステムの構造等の理解なくして、正しい結論を得ることは困難となってきており、「デジタル犯罪」という範疇を意識して、法理論を構築する必要がある。

ホ 本書は、以上のような問題意識の下に執筆したものである。

 

 

 

 

 

 

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