└ 430アナログ法体系とデジタル・ネット世界の衝突-Winny事件
└ 435Winny事件判決など
Winny事件判決など
一 論告
1 Winny事件の論告が平成18年7月3日京都地裁で行われたようである。
ウィニー開発・公開の元東大大学院助手に懲役1年求刑
ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を開発、インターネットで公開し、ゲームソフトなどの違法コピーを手助けしたとして、著作権法違反(公衆送信権の侵害)ほう助罪に問われた元東京大大学院助手金子勇被告(35)に対する論告求刑公判が3日、京都地裁(氷室真裁判長)であった。
検察側は「著作権侵害に向けられた確定的犯意に基づく犯行で、被害は甚大」などとして、懲役1年を求刑した。弁護側が9月4日に最終弁論を行い、結審する。
論告で検察側は、金子被告が「インターネット社会では情報はタダで当たり前」などとネットの掲示板に書き込んでいたことを明らかにした上で、「著作権侵害にウィニーが利用されることを意図して開発、公開したことは明白」と指摘した。
(読売新聞) - 7月3日20時22分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060703-00000005-yom-soci&kz=soci
2 弁護人らは無罪主張をしているようであるが、検察は被害甚大と論告している。
弁護人らの思惑どおりに無罪判決がでる場合には問題とはならないが、有罪判決となった場合
イ 被害の大きさ
ロ 改悛、反省の情の程度から、量刑が気になってしまいます。
3 弁論-9月4日弁護側の弁論が行われたようである。
被告側、無罪求め結審―ウィニー事件
ウィニーの開発で、著作権法違反ほう助の罪に問われた事件で、公判に先立ち記者会見する金子勇被告。公判では改めて無罪を主張。
判決は12月13日に言い渡される
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060904-04685546-jijp-soci.view-001
二 一審判決
1 Winny事件の一審判決(有罪)が平成18年12月13日京都地裁で行われたようである。
<ウィニー裁判>元東大助手の金子被告に有罪判決 京都地裁
12月13日10時19分配信 毎日新聞
匿名性が高いファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の開発・公開で映像データなどの違法コピーを助長したとして、著作権法違反のほう助罪に問われた元東京大助手、金子勇被告(36)=東京都=に、京都地裁(氷室眞裁判長)は13日、罰金150万円(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。同交換ソフト開発者が「犯罪のほう助」で有罪となったのは全国で初めて。金子被告は控訴するとみられる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061213-00000022-mai-soci
2 判決量刑など
検察官の求刑は懲役1年という内容であったが、判決は罰金150万円というもの。
裁判所が、量刑に悩んだことが伺える。
裁判所の量刑をどのように理解すべきなのか、議論があり得るものと思われる。
3 判決要旨
「ウィニー」裁判、判決要旨
2006年12月13日17時31分
ファイル交換ソフト「ウィニー」の開発・公開をめぐる刑事裁判で、京都地裁が13日、開発者を有罪とした判決理由の要旨は以下の通り。
●被告の行為と認識
弁護人らは、被告の行為は(著作権法違反の)正犯の客観的な助長行為となっていないと主張する。しかし、被告が開発、公開したウィニー2が、実行行為の手段を提供して、ウィニーの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめた客観的側面は明らかに認められる。
ウィニー2は、それ自体はセンターサーバーを必要としない技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものだ。技術自体は価値中立的であり、価値中立的な技術を提供することが犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助(ほうじょ)犯の成立範囲の拡大も妥当でない。
結局、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様によると解するべきである。
被告の捜査段階における供述や姉とのメールの内容、匿名のサイトでウィニーを公開していたことからすれば、違法なファイルのやりとりをしないような注意書きを付記していたことなどを考慮しても、被告は、ウィニーが一般の人に広がることを重視し、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら認容した。
そうした利用が広がることで既存とは異なるビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーを開発、公開しており、公然と行えることでもないとの意識も有していた。
そして、ウィニー2がウィニー1との互換性がないとしても、ウィニー2には、ほぼ同等のファイル共有機能があることなどからすれば、本件で問題とされている03年9月ごろにおいても同様の認識をして、ウィニー2の開発、公開を行っていたと認められる。
ただし、ウィニーによって著作権侵害がネット上に蔓延(まんえん)すること自体を積極的に企図したとまでは認められない。
なお、被告は公判廷でウィニーの開発、公開は技術的検証などを目指したものである旨供述し、プログラマーとしての経歴や、ウィニー2の開発を開始する際の「2ちゃんねる」への書き込み内容などからすれば、供述はその部分では信用できるが、すでに認定した被告の主観的態様と両立しうるもので、上記認定を覆すものではない。
●幇助の成否
ネット上でウィニーなどを利用してやりとりされるファイルのうち、かなりの部分が著作権の対象となり、こうしたファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く利用されている。
ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の利用状況の下、被告は、新しいビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーが上記のような態様で利用されることを認容しながら、ウィニーの最新版をホームページに公開して不特定多数の者が入手できるようにしたと認められる。
これらを利用して正犯者が匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機とし、公衆送信権侵害の各実行行為に及んだことが認められるのであるから、被告がソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為は幇助犯を構成すると評価できる。
●量刑の理由
被告は、ウィニーを開発、公開することで、これを利用する者の多くが著作権者の承諾を得ないで著作物ファイルのやりとりをし、著作権者の有する利益を侵害するであろうことを明確に認識、認容していたにもかかわらず、ウィニーの公開、提供を継続していた。
このような被告の行為は、自己の行為によって社会に生じる弊害を十分知りつつも、その弊害を顧みることなく、あえて自己の欲するまま行為に及んだもので、独善的かつ無責任な態度といえ、非難は免れない。
また、正犯者らが著作権法違反の本件各実行行為に及ぶ際、ウィニーが、重要かつ不可欠な役割を果たした▽ウィニーネットワークにデータが流出すれば回収なども著しく困難▽ウィニーの利用者が相当多数いること、などからすれば、被告のウィニー公開、提供という行為が、本件の各著作権者が有する公衆送信権に与えた影響の程度も相当大きく、正犯者らの行為によって生じた結果に対する被告の寄与の程度も決して少ないものではない。
もっとも被告はウィニーの公開、提供を行う際に、ネット上における著作物のやりとりに関して、著作権侵害の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではない。著作権制度が維持されるためにはネット上における新たなビジネスモデルを構築する必要性、可能性があることを技術者の立場として視野に入れながら、自己のプログラマーとしての新しい技術の開発という目的も持ちつつ、ウィニーの開発、公開を行っていたという側面もある。
被告は、本件によって何らかの経済的利益を得ようとしていたものではなく、実際、ウィニーによって直接経済的利益を得たとも認められないこと、何らの前科もないことなど、被告に有利な事情もある。
以上、被告にとって有利、不利な事情を総合的に考慮して、罰金刑に処するのが相当だ。
http://www.asahi.com/national/update/1213/OSK200612130057.html
三 判決関連感想など
ファイル交換ソフト「Winny」の開発者で、著作権法違反幇助の罪に問われていた金子勇氏が、罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決を言い渡された。今回の判決に対する評価や影響について、関係団体・企業に聞いた。
● 侵害行為が蔓延するのは必然、被告は判決を重く受け止めてほしい~ACCS
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)では、著作権侵害を防ぐ措置を講じないままファイル交換ソフトを開発・頒布すれば、そのネットワークを通じて侵害行為が蔓延するのは必然であるとした上で、「裁判所が認定した事実からすれば、本日の判決は妥当。被告には、この結果を重く受け止めてほしい」とコメントしている。
さらに、「ゲームなどのソフトウェア、音楽、映画などの著作物を著作権者に断りなくWinnyを使ってアップロードすることは、著作権法に違反する行為(公衆送信権侵害)に変わりない」として、Winnyユーザーに対して違法行為を中止するように呼びかけた。
● 捜査機関が再びWinnyユーザー摘発に乗り出す可能性も~ネットエージェント
ネットワークセキュリティを手がけるネットエージェントの杉浦隆幸代表取締役社長によれば、12月現在のWinnyユーザー(1日あたり)は平日で約39万人、土日で約45万人に上る。今回の判決がWinnyユーザーに与える影響については、「短期間でユーザー数が急減するかは不明」という。
杉浦社長は、今後、ファイル交換ソフト利用者が逮捕される可能性を指摘する。Winnyユーザーの著作権法違反容疑での摘発としては、2003年11月に2名が逮捕されたのみだが、「今回の裁判の判決が下されるまで、捜査機関は摘発に踏み切れなかった」と分析。「金子氏に有罪判決が下されたことで、捜査機関は、他人の著作物を流通させているユーザーを(著作権法違反の正犯として)取り締まることも予想される」。
● コンテンツ配信システム「SkeedCast」には影響なし~IIJ
また、金子氏が開発に参画したコンテンツ配信システム「SkeedCast(スキードキャスト)」を手がけるドリームボートに出資するインターネットイニシアティブ(IIJ)では、「SkeedCastはP2P技術を活用しているが、ファイルをアップロードできる人を限定したり、Windows Media DRMによる著作権管理を施している点などが、Winnyとは異なる。そのため、今回の判決がSkeedCastに与える影響はない」とコメントしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061214-00000023-imp-sci
四 判決関連感想など-その2
私は、法律の専門家ではないので、量刑が妥当なのかどうかについては良く分らない。しかし、裁判官の事実認識には違和感はなく、妥当なもののように思える。
一方、今回の判決に関して、毎日新聞のWeb版で法律の専門家は、次のようにコメントしている。しかし、技術者がなぜ萎縮することに繋がるのか理解できず、コメントの主旨がいま一つ理解できない。
▽ネット社会に詳しい岡村久道弁護士(大阪弁護士会)の話 ウィニーが客観的に見て、料理にも殺人にも使える包丁なのか、もっぱら違法行為に使われるピストルなのかが問われていたのに、判決は踏み込んでいない。少子高齢化の中でハイテク技術大国を目指す日本の司法が、ハイテク先端部門にきちんとした判断をできなかった。委縮効果を生む懸念がある。
私は、むしろ、今回の判決を受けて、社会のインフラとなる技術の開発に取り組む者は、単に技術のシーズだけに捉われ、技術至上主義に陥ってはならいと、警鐘をならしている判決と受け止めた。
ウイニーのような社会のインフラとなる技術を世に出す場合は、どのような手法で開発すべきか、法律家からの適切で実践的なアトバイスが望まれる。そして、法律面からそれに答えられる法律の専門家が必要とされているのだろうと思う。
http://www.ofours.com/bentenkozo/
投稿者 goemon : 01:47 | コメント (0) | トラックバック(2)