IT技術者のためのデジタル犯罪論  弁護士 五右衛門(大阪弁護士会所属 服部廣志)

  目  次

電磁的記録毀棄の罪

三 コンピューター犯罪とその特性

1 コンピューターを利用したアナログ犯罪

 コンピューター犯罪といっても、特別な犯罪ではない。

イ 他人を騙して金員を騙し取る---------詐欺

ロ 他人を脅迫、強要して金員を支払わせる----詐欺まがいの脅迫、強要の罪

ハ わいせつ物等を頒布などする---------わいせつ犯罪

ニ 他人の著作権を侵害する-----------著作権侵害

ホ 他人の名誉を毀損などする----------名誉毀損

特別なこと、特別な犯罪が行われているわけではないのです。

 ただ

イ インターネット世界における、このような犯罪が、インターネット世界という特殊な環境のなかで行われることによる特殊性があることが特徴である。

  -顔のない世界、時空を越えた世界、一対一で舞台の上にいるという錯覚を呼ぶ世界、対人関係における言動の抑制力が効きにくい世界、独りよがりに陥りやすい世界、孤独で他人の助言を得にくい世界

 

  -顔のない世界、インターネット上で相対する人間は、相手の顔が見えない、そして自分の顔も相手にさらしてはいない-このような独特の世界であることが-顔を相対するリアル世界とは異なる世界を生み出している。

  -顔のない世界であることから、相手の感情が理解できず、また、自分の顔をさらしていないことから、実社会においては健全な形で抑制していた人間の醜さ、残虐さやドロドロとした欲望をさらす行為を平然としてしまう

  -時空を越えた世界、それは大人も子供も、犯罪者もそうでない人も、知識のある人もない人も、あらゆる人が混然一体となっている世界です-そこには、弱い人を守り、配慮するというリアル世界の優しさはない

  -一対一という錯覚を呼ぶ世界-ネットやMLの世界は、自分と不特定多数の人々との世界であるにもかかわらず、リアル世界の感覚では、自分の前にあるコンピューター一台と議論などをする相手一人が舞台の上にいるかのような錯覚を呼ぶ世界-この一対一で舞台にいるかのような錯覚が、リアル世界では想像もできないような、激烈な、また過激な議論と、お互いの名誉を毀損し合うという醜い争いを引き起こしている

  -そして、リアル世界と異なり、インタラクティブにお互いに、直ちに反応し合う世界でもあり、他人の助言を受けたり、また冷静に自分の行動を振り返る時間的余裕をも失わせる世界--そこには、独善と、思いこみ、そして騙し、騙されるというリアル世界とは異なった様相があるのである

 これら、ネット特有とも言える独特の世界、環境のなかで、アナログ犯罪は、違った様相を呈している。しかし、犯罪としての本質というか、犯罪の内容自体には、特殊なものはないのである。

 

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